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由宇 尿閉
由宇が寝付くと周防はすぐさまステーションへ戻り、椅子に優雅に座って寛いでコーヒーを飲み、襟にhead nurseのエンブレムを付けた黒髪、アーモンドアイの柔和な顔立ちの青年に声をかけた。
「真尾師長、由宇くんなんですけど…もうすぐで11時間排尿確認とれとらんです。悪寒酷いようで熱もまだ上がるやないかと」
由宇の状況を説明した。
「11!?」
驚きマグカップを机に置くと、ローラーのついた椅子ごとカルテ棚に動き、結婚指輪の付いた左手の指でカルテをパラパラとめくった
「導尿の指示は書いていってくれてるね」
「ええ。つい今先生来たときに報告して導尿指示もろたんやけど俺、よーやらんです」
「んー…周防導尿は苦手?」
「先生でさえ膀胱鏡通すとき苦労してたんで正直やりたないです」
「んー…そうか僕がやってもいいし、他の子にふってもいいんだけど」
「そしたら師長頼みます」
「うー…しかし夜勤のときに困るよね?万が一入れ直しになる可能性がゼロとも言えない。一緒にやろうか?」
師長と言ってもまだ若い年齢の師長は白髪ひとつないその黒毛を掻きあげ、椅子から立ち上がり周防に提案し、周防は頷いた
「はい。自信無いですけど…やってみます」
周防は処置コーナーへと場所を移しバルンカテーテルの用意をした。
「男子の導尿…苦労する…」
ぶつぶつと周防が呟くと師長が反応した。
「何?それ」
「語呂合わせなんやけど、挿入時90度壁に当たったら60度やから苦労するって覚えたんです」
「なるほど。たしかに苦労」
「しょうもな…とか言わんでくださいよ?」
「いえいえ。語呂合わせとか懐かしい。んじゃ行きますか?」
「はい」
2人は道具を一式持って由宇の部屋へと向かった
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