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周防 

「なんなん?あれ…」 周防はステーションに帰るなりぶーたれていた 「周防、なんかお怒り?」 「祖父江先生、由宇くんいじめた感じやのに、 臣くんにデレデレとか解せんわ」 「まあみんな受け持ちは可愛いもんだから」 真尾はデスクに座り、コーヒーマシンをセットすると書類に目を落とした。 その間も周防はぷりぷりと怒り続け 「えこひいきは反対や。なんであの子が一般床で由宇くんが保護観察室やねん。祖父江先生、頭おかしいんちゃうか?」 「言うね」 「何が違う?2人とも自己抜去してんねんで?ちゃいますか?」 「そうだね。まあそれは診てきた年数の問題?彼ら10年の付き合いだから」 周防に目を移すと真尾は微笑んだ 「は?」 「臣くんは9歳から入院してるんだよ」 「なんやて?人生半分以上入院してんの?」 「そうなるね」 「なんで食べんのや…」 「分かんない。祖父江先生にも言わなかったみたいだから」 「師長!受け持ちさせてやってください」 「いや、何を言って?さっきまで怒ってたよね?きみ」 「怒っとったんは祖父江先生にですわ。食べられへんままやなんて人生損しすぎや。由宇くんともどもおまんまのありがたさ説いたる!」 「んー…分かった。任せる」 燃えている周防をしりめに真尾は書類に再び目を落とし、〝受け持ち看護師 周防雅宗 〝と記入をした。 ・ ・ 「意気込んだものの、どないしたったらええんやろ?地方もん同士仲良うしたってなぁとか?いやいや…んー…」 「周防、眉間に皺寄ってるよ」 「瀬谷先生!どうしたんです?」 「由宇の様子を見に」 「おおきに。きっと喜びますわ」 「悩みごとかい?」 「いや…臣くんの受け持ちさせてもろたんやけど、どう対応したったらええんかなって」 「周防の思うようにやればいい。正解はないから。うまくいってはじめて正解が見つかるもんだと俺は思う。なんにしろ人間相手はむずかしいよ。心があるから」 「そうですね。やれるだけやってみます」 周防は瀬谷に背中を押され、臣の部屋へと向かった。

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