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由宇 ニコ

由宇は今か今かと扉が開くのを待っていた。 ギィー… 扉が開くと駆け寄った 「おっと…ごめんな?由宇。まだ出せれない」 瀬谷は由宇を抱きとめ、そのまま垂直に抱き上げて部屋の中央へと入っていき、ベッドに由宇を座らせた。 「っや。違う!おかえりってするつもりだったんだけどっ」 「ん?」 「だから、おかえり!」 「あー…そういうことか」 瀬谷は腰を折り由宇に視線を合わし、由宇の頭を撫で 「ただいま」 「ここいると何も聞こえないし、景色しか見えないからちょっと落ち着けた」 「そういう目的の部屋だからな?本当は出してあげたいが…今夜は辛抱してくれるかい?」 「いいよ。あっちだと来てくれないけど、ここいれば先生が会いに来てくれるんだよね?だったら出たくない」 「え?ああ…そうだな。たしかによほど呼ばれない限りは行かないな。出たくない…と来たか。もっと出してくれって泣くのかと…」 「でも、祖父江先生が来たら泣く」 「よほど怖い目にあったようだな」 「怖かった!」 「そうか。いい先生なんだけどな?」 「どこが?」 「いずれ分かるさ」 「信じらんない。先生、明日来てくれる?」 「んー…朝は外来があるんだが」 「来てくれない…」 由宇はしゅんとし、肩を落とした 「分かった。朝1で来るから」 「本当?」 由宇はニコッと笑い 「じゃあ、行ってらっしゃい」 手を振り瀬谷を見送った。

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