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由宇と臣、出会う

周防と祖父江が消え、変わりに夜勤看護師の牟呂雫が来ると臣は雫に頭を下げた。 「臣くん。今日夜勤の牟呂です。よろしく」 「…」 「えと、お話苦手?食堂行けるかな?ご飯食べなくてもいいから行かない?他の子来るよ?」 「嫌」 「そ、そうか。無理はよくないよね?」 臣は静かに頷いた。 「また手が空いたら栄養の液持ってくるからね」 雫が立ち去ろうとすると臣は雫の白衣の裾を掴んだ 「ん?どうした?」 「…」 「んー…弱ったな。学生の時小児対応得意じゃなかったんだよね。行きたい?行きたくない?それとも行けない?」 「連れてって」 「自分で行くのは嫌ってこと?」 「うん」 「分かった。じゃあ一緒に行こう?」 雫は苦笑を浮かべながら臣の手を引いて食堂へと案内した。 「ここ座ろうか?角だけどお庭見える席だよ」 「うん」 「離れるけど大丈夫?」 「うん」 言葉数少ない臣に不安を感じながらも、雫は由宇を迎えにいった。 ・ ・ ギィー… 「由宇くん?」 「あ…」 由宇は雫を見てばつの悪そうな顔をした。 「この間はケガさしてごめん」 「大丈夫だよ。ご飯行こうか?」 「行かないとダメな感じ?」 「だね」 「分かった」 由宇は雫に付いて歩いていった。 食堂には6人の子がいた。そのうち1人は安楽椅子のような椅子に座り角で空を見上げてる。 「はじめて見る」 「今日来た子だよ」 「ふーん…」 「食事終わるまでは自由ね」 雫は臣の元へと戻った 「どうする?嫌じゃなかったらここで流すけど」 「よかとよ」 「大丈夫?」 「この後だとお腹タプタプで寝にくいけん今がよかと」 はじめて長く話す臣に雫はニコっと笑みを向け「すぐ用意する」 キッチンカウンターへと入っていった。 雫が消えてから由宇は臣に近づいた 「隣、いい?」 「よかよ」 「由宇。担当は瀬谷先生と周防さんそっちは?」 「臣。看護師さんは一緒やね?先生は祖父江先生ばい」 「臣…くん?何歳?」 「19歳」 「2個上だ」 「臣でいいよ。由宇って呼んでよかと?」 「うん。九州の人?」 「6歳までやったとが、なかなかなまりは治らんばい。気になるとね?」 「いやなんか不思議な感じ」 「ごめん。話割るよ?」 雫が点滴スタンドに銀色の袋をぶら下げて近づき、臣の前にしゃがむと腹に聴診器をあてた 「OK。流してくけどなんかあったら呼んでね?」 「はいね」 栄養をポタポタ落としはじめると雫は食事の支度をはじめた 「その鼻のってやっぱり…」 「由宇、これはじめて見ると?経管栄養って言うとよ」 「祖父江先生…マジ鬼」 「え?」 「痛いだろ?それ。無理矢理やるとか最低」 「なんか誤解ばしよっと?」 「え、だって食わないからって無理矢理やったんだろ?あの鬼医者が」 「何を言うとね。祖父江先生は鬼じゃなかよ?優しか人たいね。ここまで元気にしてくれた良か先生ばい」 「は?」 祖父江先生…優しい? 何言ってんだ?

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