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由宇 瀬谷に懐く
午前中をステーションで過ごしていた由宇だったが、瀬谷がステーションに来るとすぐさま瀬谷の姿を見つけ、ぱっと椅子から飛び走った
「あ、こら由宇くん!走らないよっ」
真尾が注意すると、ニコニコとした笑顔で由宇は舌を少し見せ振り返った
「ごめん。許して!」
「まったく…かわいい顔しちゃって」
由宇の後ろ姿を微笑ましく真尾は見つめ、自分の仕事に戻った。
「先生っおかえり!」
瀬谷の腰を後ろからぎゅっと掴み由宇は満面の笑みを浮かべた。
「おっと。どうした?」
「ちゃんと帰ってきたから嬉しくてさ」
「入院当初は悪態づいたりと意地っ張りだったようだが、そっちが素か?」
「さあどっちでしょう?どこ行くの?」
「医局だよ。また後でな?」
瀬谷は由宇に手を振り歩きだした。
瀬谷が歩き始めると少し離れて由宇が後について歩いた。
「ん?」
瀬谷は首を傾げながらも関係者以外立ち入り禁止区域まで来、後ろを振り返った
「由宇?どうした」
「行ってらっしゃい」
瀬谷は立ち入り禁止区域内に入り、排泄を済ませると突然嫌な予感がして扉を開けた。
すると扉のすぐ横で由宇が体操座りをしている
「由宇…何してる?」
「待ってる」
「困ったな…ずっとそこにいるつもりか?夏とはいえ風邪をひくぞ」
由宇は静かに頷き
「だいじょーぶ」
由宇の姿に瀬谷は折れ
「ふぅ…分かった。おいで?」
「入っていいの?」
「特別な?」
「ひいきしていいの?」
「目を瞑る」
瀬谷は由宇を連れて医局へと入った。
立派なソファが2つにデスクが2つ、たくさんの本と山積みの書類、サンプルらしきいかがわしい道具が所狭しと置かれていて、由宇は物珍しそうに見回した。
「あ…」
ソファの上に転がり本で顔を隠している祖父江が見えて由宇は思わず後退りし
「なんで寝て…」
「仮眠用兼ねてるからね、そのソファ。祖父江は昼寝するタイプなんだよ」
「…ん」
「おっと起こしたか?祖父江。悪いな」
本の端から挙動不審な由宇が見え
「なんでおチビさんがいるんだ?」
「俺が連れてきた。医局前でちょこんと座っていてね」
「懐かれたな…」
「のようだね。由宇、おいで」
瀬谷が祖父江の反対側のソファに座ると、迷うことなく由宇は瀬谷の隣に座って、祖父江から隠れるように瀬谷の胸元に顔を埋めた
「祖父江はすっかり嫌われたな」
「それでいい。その方が遠慮なく治療できる」
「こらこら怖がるよ」
由宇は瀬谷のタバコの香りに心を落ち着かせ目を閉じた
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