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実は優しい祖父江先生

由宇をお姫様抱っこで瀬谷が連れ、由宇に繋がった点滴スタンドを祖父江が引きながらステーションへ戻ってくると、真尾が慌てて近寄ってきた 「せ、先生方っ、連絡いただけたら迎えに行ったのに。お手間をとらせて」 「いやいや。いいよ」 「こっちに用があったからついでだ。問題ない」 「ん?あれ…寝てます?由宇くん」 「鎮静剤を口に入れたから鎮静がかかってる。そこの処置ベッドで観察頼めるかい?自室でもいいだろうが…少し泣き虫になっているから君たちの側のがいいだろう」 「わかりました…ステーションにいるのが癖になると困りますけど、それで彼の心が安定するのであればそうしますね」 「頼んだよ。祖父江は臣のとこに行くんだったか?俺は先に戻って事務作業をしているが」 「ああそうだ。ところで真尾師長、臣の採血データはあがってきているか?」 真尾は書類ファイルから紙を出し、半分に切ると祖父江に見せ、もう半分をカルテ整理のレターケースにしまった。 「10か。赤血球も少ないな…」 「鉄剤内服ですか?」 「いや内服は体に合わないようで消化器症状が出るから。点滴…んー…抜かれると困るしな」 「注射?」 「だな。ただ血管があんまり無いんだ、困ったことに」 「先生、看護師のために血管とっておくからですよ。わざわざ際どいとこいくタイプですから」 「いざというときに困るだろう」 「そこまで考えるの先生くらいなもんです。ハゲますよ」 「きっついな…さすが魔王だ。少ししたら準備して臣の部屋に持ってきてくれ」 「分かりました」 祖父江は苦笑いをしながら検査データの紙を持って臣の元へと向かった。 「臣、入るぞ?」 「先生、どうしたと?」 「今朝の結果があがった」 「どうせ良かなかったとやろ?注射ばするとね?」 「説明せずとも理解したか」 臣は唇を噛んだ 「せん」 「臣」 「やりとーなか」 「臣っ」 「せからしかっ」 「臣…」 「うるさいって言っとると!」 何も言わず祖父江は臣の細い体を抱き締めた 「離し」 「離せない」 「いやっ」 「死んでほしくない」 臣の後頭部を優しく撫で 「脅すわけではないが、貧血は放っておくと恐ろしい事態になる可能性がある。幼いときから診てきたおまえのそんな姿を俺は見たくない」 切ない声音で呟き、臣の髪の中に顔を祖父江はうずめた

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