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バーバー周防 再び

勉強がひと段落したころ、真尾と入れ替わりに周防がリカバリーにやってきた。 「由宇くん、臣くんこんにちは」 「むーちゃん!いらっしゃい」 「臣くんは昨日誕生日やったからかご機嫌さんやな?おめでとうな」 「ありがとう」 「由宇くんは…そういや前髪長なったな?」 「うん。だって何ヶ月?夏休み始めからだから3ヶ月はいるし」 由宇は前髪を引っ張り、息をふぅと髪にかけた 「ほんまはいかんのやろうけど切ったろか?」「え?切れるの?」 「クーパー使えばスパンスパンやで」 「クーパー?」 「医療用のハサミ」 「怒られない?」 「怒られるやろな。ははっ、せやから工作バサミでやったる」 「んー…」 「なんなん?」 「失敗されんのやだな」 「結構器用なんやで?摘便なんクイクイっとやれちゃうし、注射もそれなりにやれんで?」 「好きだね、摘便。痛いんだけど、あれ」 「え?患者さんはそうかも分からんけど、快感なんやもん」 「掘られる方は苦痛でしかないって」 「由宇、むーちゃんち床屋やったと。やけん、うまかよ?任せるとよか」 「臣がそういうんなら…」 しぶしぶ切られると鏡をみて由宇は固まった。 「うん。ええんちゃう?」 「え…パッツン…」 「嫌なん?」 「だって…似合わなくない?」 「かわいいで?」 由宇は鏡に映る自分を見て不服そうに周防を睨んだ ちょうどその時 「由宇、いるかい?」 「瀬谷先生…また来たんだ?」 車椅子を押しながら瀬谷がリカバリーに訪れた は 「ん?髪どうしたんだい?なかなかかわいいじゃないか」 「うー…変じゃない?」 「大丈夫。由宇はどんなでもかわいいよ」 由宇は照れて顔を赤らめるとうつむき 「またかわいいとか…男なのに」 「すっかり先生のとりこやなぁ。由宇くんは」 「え?」 「ほっぺた赤くして先生好きぃ言うてんの丸わかりやで?」 「ち、違っ」 「周防、あんまりからかってくれるな。せっかくここまで慣れてくれたんだから」 「治療に差し支えます?」 「そう」 「分かりました。先生、迎えに来たっちゅうことは…」 「うん。ちょっと試したいものがあってね。連れていくよ」 「行ってらっしゃい、由宇」 「じゃあ由宇行こうか?車椅子乗って」 「うん?分かった」 由宇は瀬谷に連れられてレントゲン室へと向かった

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