233 / 1213
学生さん
しばらくするとガラスの向こうにゾロゾロと白い塊が見え、由宇は焦った。
「え…な、何…あれ」
体調悪すぎて幻覚?
「学生さんやね」
「学生…?」
「看護師の卵とよ。こん科にも実習に来るとやね。3週間ひとところで学ぶそうばい」
「くわしいな」
「小児科の時、学生さんが付いてくれたことがあったけん。その学生さんたちが教えてくれたと」
「たち?」
「入院長いけん、学生さん付いたの一回だけじゃなか。ちなみに奈南さんがそうばい」
「へ?そうなんだ?あ、だからせからしかってのを知ってたりしたんだ」
「またここから出たころ話してあげるけん」
「分かった。あーしかしびっくりした。幻見えちゃったかと思ってさ。しかし実習とかなんか大変そう」
「いろいろ積み重ねていまの先生たちと看護師さんがおると。みんな凄かよ」
「凄い…のはなんか分かった。ちなみに夕べ臣、寝れた?」
「寝た。注射痛かったけどおかげで寝れた。祖父江先生でもあんだけ痛かっちゃけん…他の人が打ったら…うー考えたくなか」
「そう言うなって。痛くて寝れないのもやじゃん。祖父江先生なら別にいいじゃん」
「じゃあ由宇がされたらよか!わーわー泣くに決まっとーと」
「泣かないし…」
「由宇、夕べなんばあったとね?酸素マスクしとる。寝ねてないんじゃなかと?」
「え…と、寝たよ。…うん」
由宇は夕べを思い出し、顔を赤らめた。
恥ずかしすぎる…っ
「ってわ…あいつら窓のとこ来るし」
「あ!大雅」
「え…臣?知り合いいた?」
「幼馴染」
「会いに来てくれるといいな」
「え…こげん姿ば見せたくなか!恥ずかしか。あ…」
「どうした?」
「看護師の卵が来たってことはお医者の卵も近々来るとやろね」
「なんか問題ある?」
「採血…実習」
「は?」
「血ぃ採られる」
「本当?」
「本当」
「やだ…かも」
「2人とも何青ざめとん?夕べ2人とも頑張ったんやってな?夕べよりは体調ええんかな?」
「あ、周防さん。また仕事?これ、取っていい?」
由宇はビヨーンと酸素マスクを引っ張った
「ダメや。ちなみに明日夜勤入りでようやく休み。明日平穏に過ごさせてや?で、何?」
「いや…医学生が採血するって臣が言うから」
「あーそりゃ指導医がついてするやろ?その為の実習なんやから」
「俺、やだよ」
「嫌がる子説得すんのも実習やねん。協力したって」
「やだし」
「まだうちに来るかも分からんうちから嫌がられてもなぁ。まだ初年度やし見学だけの可能性が…。まあ来ること決まったら悩み?ってわけで、採血させてな?」
「え?なんでそーなる?」
「指示やで仕方ないやん?」
「明日にしようよ」
「ほんなら選ばしたる。今から手にするか明日足にするか選び。しー先輩が足採血、腕が落ちる前にやりたいって言っとたわ」
「脅す?」
「ちゃう。選択や」
「由宇…いましてもらった方がよかと。足、されたことあるけどあれは痛かよ」
「うー…分かった」
「よし、ちゃっちゃと行こか」
周防は採血の道具を一式ベッドに並べ、支度を始めた。
ともだちにシェアしよう!