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学生 紫藤

由宇がヘロヘロになるほどされた治療から数日後のこと。 ステント留置してから特にトラブルはなかったはずなのにおしっこに血が混ざるようになった。 「周防さん…なんかさ…おしっこが変かも」 「変ってなんなん?」 「たぶん血が…」 「赤いん?」 「うん…なんか…真っ赤なんだよね」 「真っ赤って…ちょ…そんな悠長な…先生に診てもらうで待っとり」 「え?嫌でも後1時間で回診じゃん。別にそん時で…」 「だめや。臣くん!由宇くん逃げんよう見張っててや」 「…?よくわからないけどわかったとよ」 しばらくすると由宇の元にハーフのような見た目の長髪の学生を連れた瀬谷がやってきた 「おはよう、由宇。臣もおはよう。紫藤くん、あっちのおっとりした子が御崎臣くんで祖父江先生の担当の子」 「はい」 「で、反対のベッド。さっき話した今から処置する佐久間由宇くん」 瀬谷は2人を紹介すると由宇と臣に紫藤を指差し 「学生の紫藤縁先生。今日から数日、先生も一緒だからいい子にね」 「う…本当に来た。痛いことする?」 「由宇、そう気負わなくていい。由宇が緊張せずにリラックスしててくれば痛くない。 紫藤くん、バルンの再留置するんだけど、泌尿器科でやったかな?」 「ええ」 「じゃあやってみなさい」 「分かりました」 「え?」 2人のやりとりに由宇は首を傾げた。 マジ? 瀬谷先生でも怖いのに学生って… 絶対痛いじゃん…怖い 紫藤は瀬谷に指示される前にてきぱきと支度を進めた 「ちなみに…彼、暴れます?」 「んー…泣いちゃうかな」 「はぁ」 「…ひっ」 あからさまな大きなため息に由宇は後ずさった 「泣く子は苦手です」 「まあ、気持ちは分かる…でも、あやし方も勉強してくれるかい?ここはそういう子、少なくないから」 「小児科実習よりある意味大変ですね…えーと由宇くん?ベッドの隅で座っていないで寝てもらえます?」 「い…いや…」 「聞こえました?下着とって寝てください?」 「いや…です」 「バルン挿れて膀胱洗浄するんですよね?血尿出ているんでしょう?」 「バルンとか膀胱洗浄とか聞いてないし痛いの嫌です」 「膀胱の中で血が固まったら痛いどころの騒ぎじゃないと思うんですけど…」 「怖いよー…瀬谷先生、このお姉さん怖い」 由宇は瀬谷をすがるような目で見つめ震え、 紫藤は由宇から出た言葉と由宇の姿を見て、表情を少し柔らかく崩した。 「きみは何か勘違いをしています」 「え?」 由宇は紫藤に視線を移し、眼鏡の奥の薄い瞳を見つめた

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