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真白

由宇がデイルームに来ると、見た目小さな少年が小上がりの畳スペースに転がり日向ぼっこしていた。 「あ…あいつって…」 いちばん小さくて色白って言ってた…たしか真白くん…だっけ? 由宇は、本棚から本を一冊手にとり真白の前に立ち 「隣、いい?」 「え…?うん」 「あんまり顔色よくないけど大丈夫?」 「大丈夫。貧血なだけ」 「何歳?」 「12」 「小学校?」 「ううん、中1」 「そっか。俺は高2」 「おにーさん、なんて名前?」 「由宇。佐久間由宇だよ」 「ゆっくん」 「ん?あだ名的な?」 「うん。ボクは望月真白(もちづきましろ)だよ。まーちゃんって呼ばれてる」 「俺も呼んでいい?」 「うん」 「あんま話したことないけど、入院長い?」 「出たり入ったりだからなんとも。ずっと小児科だったから変な感じ」 「あ、じゃあ臣を知ってるんだ?」 「んー…見たことはあるけど、話したこと無いよ」 「そうなんだ?いいやつだよ」 「じゃあ今度話してみようかな?」 「うん。そうしなよ」 「まーちゃーんっ」 遠くから声が聞こえ真白はあきらかに嫌そうな顔をした 「呼ばれてるけど返事しないの?」 「しない」 「なんで?」 「呼ぶときは絶対いいことない」 「まあ確かに?」 「あ、いた」 「げ。見つかった」 「そんな嫌そうな顔しないでよ?」 「嫌そうなじゃなくて嫌なんだもん」 「はいはい。先生が大事な話があるって」 「嫌だっ。聞きたくない」 真白は両手で耳を塞いだ 「こうなると難しいんだよな…この子。まいったな」 「えと、一緒に行く?」 「ゆっくん?」 「あ、いや…ひとりで行くの怖いならついて行こうか?ってこと」 「由宇くん、気持ちはありがたいけど…個人情報とかいろいろあってね」 「まーちゃん、ゆっくんについてきてほしい」 「んー…困ったな。先生がダメって言ったらダメね?とりあえずみんなで行こう?」 真白は由宇に手を伸ばし 「ゆっくん、手繋いで?」 「え?うんいいよ」 由宇は真白の手を引っ張り真白を起こした なんか…弟ができたみたい むずがゆくて変な感じ しかし、自分のこと〝まーちゃん〝って言うとか…幼い 由宇は少々ニヤケながら、看護師に案内され面談室へと向かった。

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