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気まずい2人

取り残された由宇と祖父江の2人は気まずい時間を過ごしていた。 はじめにその静けさを打ち崩したのは祖父江だった 「由宇…その、おまえは本が好きなのか?」 「え?あ…うん。暇だし。なんつーか、知らない世界知るのっておもしろい」 手に持っている借りた本をぎゅっと由宇は握りしめ答えた 「なんの本?」 「これは…なんかちんちんの本」 「は?ちんちんってペニスか?な、謎のチョイスだな」 「だってあったし」 「見せて?」 「う…」 由宇はおどおどしながら祖父江に本を差し出した。 祖父江は受け取った本をパラパラとめくり 「なるほど…なかなか興味深い」 「先生借りてく?」 「ん?いや、由宇が、借りたんだろ?」 「別に。どうしてもそれがいいわけじゃないから」 「そうか。じゃあありがたく先に読ませてもらうよ」 ガチャ 「見つかりました。ほら、まーちゃんおいで」 「ごめん…なさい。まーちゃん…ボク、怖くなっちゃって」 「怖がらせる言い方してわるかったな?来なさい、真白」 看護師は無言で由宇を手招いた 「?」 由宇は立ちあがり看護師についていき面談室を後にした 「2人にして大丈夫なの?」 「由宇くんは知らないだけで祖父江先生はあやすのうまいんだよ。ただ照れ屋なのかな?俺らの前ではそういう優しい態度あんまり見せたことないんだよね。ありがとうね。付き添ってくれて」 由宇は看護師の背中が見えなくなると、デイルームへと再び向かった。

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