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慈愛
感じたことを知られたくなくて由宇は抱きしめてこようとする祖父江を両手で押しのけた。
「…や」
「いやなのか?照れなくてもいい。ほら、
ぎゅってしてやる」
「うー…」
「遠慮しない」
「もう寝たい」
「分かった」
由宇は寝ようとしたが苦しさに寝つけず苦悶の表情を浮かべた
「…くる…し」
「由宇。抱かれてろ」
祖父江は由宇の呼吸が楽になるように、由宇を座らせた状態で自分にもたれかけさせた。
「な…に?」
「胸が広がって呼吸が楽になる」
「先生…」
なんだろ?
めっちゃ…優しい
これか?臣が祖父江先生だいすきな理由
痛いこととか怖いことばっかしてくんのに変な感じ、、
ちょっと分かったかもしんない
由宇はツーーっと涙をこぼし、祖父江の白衣を濡らした。
祖父江は何も言わず由宇が眠るのを見守り、その背を撫で続けた。
ーーー
由宇が眠りにつくと祖父江はそっと由宇をベッドに寝かせ、ベッドの頭元の角度を変えた。
「寝れたな…よかった」
由宇の急変に何も気づかず寝ている臣の前髪に触れリカバリールームからステーションへと帰った。
「おつかれさまです。眠るまでついていたんですね」
「ああ」
「さすがです。助かりました」
「日勤だとそうもいかないが夜くらいはな。ちなみに他の子は?変わりないか?」
「はい。真白くんもマルク後ですけど特に合併症もなく経過していて、眠れてもいますよ」
「よかった。おつかれ」
祖父江は椅子を引き座った
「え?」
「なんだ?いちゃまずいか?」
「いえ…どうして医局に帰らないんです?」
「もう夜が明ける。いるよ」
慈愛に満ちた顔をした祖父江を朝日が照らし、長い夜が明けた。
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