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まーちゃん はじめての縫合
祖父江はリカバリールームの扉を開き、瀬谷に声をかけた。
「瀬谷ー、真白…縫合するわ」
「何があった?」
「転倒して側頭部を4cmほどパックリだ」
「休みなのに来てくれたのか?」
「ああ。たまたま真尾といてな。ついでだし、着いてきたんだ。真白は任せといてくれるか?」
「頼むよ。由宇がようやくうとうとしはじめたとこだから動きたくなくてね」
処置室に戻ると祖父江は椅子に座り、手袋をはめた
「まーちゃんじゃあベッドに寝よう」
「よし、行くで?まーちゃんはい、ゴローン」
「や…ぁ、怖…」
「寝ては無理か…。じゃあ周防、後ろから抱いてやって。手が出てこないように手を掴んで
「やりにくないです?」
「まあ仕方ないね」
「真尾は足がもしかして飛んでくると危ないから側で待機しつつ、介助を」
「はい」
「よーし…まずは傷を洗うか」
「濡れないように器当てるね」
「…っ〜!」
「強いな。ん、じゃあキシロカイン2%で、針は細いのにしておこうか」
目の前に迫ってくる注射器を見て真白は顔をひきつらせ、泣きこそしないものの大声をあげた
「やぁあっっ」
「大丈夫だよ。麻酔の注射だから、縫う痛みをとってくれる」
「麻酔いやっ」
「注射怖いよな?でも、麻酔なしで縫うのもなぁ…」
「ほんならスプレー使います?」
「周防、まーちゃんを悶絶させる気なの?」
真尾がすかさず突っ込んだ
「注射イヤで麻酔…って。スプレーならいけるんやないの?」
「いけはするだろうが…注射より痛いぞ。やってみるか?周防」
「いーっ、遠慮しときます。ごめんなぁ、まーちゃん怖がらせて」
「真尾。キシロカインゼリーをくれ」
「えっ!」
周防が驚いて声をあげた
「それいけるんや?」
「ピリピリとした感じはするようだが、いくらか痛みが軽減される。無いよりはマシだろう」
「はい。先生」
「ん。真白?ゼリーを塗るよ」
「いっっ!!」
「沁みるな。アルコール綿ちょうだい」
「イソジンやなく?」
「麻酔の効き具合をみるんだよ。冷たいか?」
「冷たくない…」
「ん。じゃあイソジン。効果短いから急ぐぞ」
「んーっっ」
「まーちゃん痛いん?」
「引っ張られてる、怖いー」
「大丈夫」
針が10針目に及ぶころ、真白がついに悲鳴をあげた。
「やぁあああ!痛いっ」
「薬効…切れたか…後消毒してガーゼと包帯するから頑張れ」
「まーちゃん…もう無理ーっ。こんなのガマンできなーいっふぇ…えぇん」
「真白が…泣いてる」
祖父江は目を開いたまま、真白を見つめた
ようやくさらけだしてくれたか…
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