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長い夜のはじまり

部屋に着き、真白を寝かせたところで電話を受け、祖父江は真白を怯えさせないように額を撫でた。 「たしかに…若干熱いか?」 「?」 「真白、具合は?」 「痛い」 「だな。他は?」 「疲れた」 「そっか。背中のキズ、見せてくれるか?」 「背中…?うん」 真白は祖父江がみやすいように横を向いた 「上手。触るよ」 ガーゼを外しみると、テープかぶれが起きてはいるものの創部のキズは塞がっていた 「赤みなし腫れなし熱感なし…大丈夫そうだな。後で周防にガーゼを変えてもらうからしばらくこのままでいれるか?」 「分かった。先生ありがとう。おやすみなさい」 「ああおやすみ。いい夢を」 祖父江は真白の頭をくしゃっと撫で、ステーションへと戻った。 「真尾、感染の徴候(ちょうこう)は無かったから。疲労からのものと考えて良さそうだ。周防、一応朝イチで真白の採血オーダー出しとくからよろしく」 「え?…本気?」 「由宇くんの採血もあるから無理なら日勤でやるから無理しなくていいよ。でも、トライはしてもらいたいかな」 「分かりました」 祖父江と真尾はリカバリールームへと入った 「瀬谷、こっちは済んだ」 「助かったよ、2人とも」 「由宇くん…寝てますね。血液培養とられるのも知らずにスヤスヤと…」 「ああ、深い眠りにようやく入ったから臣を診て医局へ帰るよ」 うとうとしていた臣は油断していた カーテンが閉められ、3人が取り囲み見下ろされていた 「…っ、なんね?なんばしよっと?」 「診察。由宇は寝たからね。臣の番だよ」 「間に合っとーたい」 「臣、交換しないとな」 「そうそう、ほら臣くん?お股楽にしてね」 「や…寄ってたかってやるとか聞いてなか」 「遠慮するな」 「きゃーえっちぃ」 「こらこら由宇が起きてしまうよ」 その言葉に慌てて臣は口を閉じ、真尾は手際よくおむつを開いていった 「あ…出て、ないですね?」 「腹圧かけるぞ」 「…っふ…ぅっっ」 臣は顔を歪めた 「痛むか?」 「な…奈南さん、こんなに痛くなかった。瀬谷先生痛い」 「悪いね」 「また詳しく後日見るとして…出たからとりあえずよかった」 「臣くん綺麗なったからしまうねー」 「臣、また明日挟んで明後日くる。真尾は朝にはまた来るからいい子にな。今夜は寝れそうか?」 「うん」 「よし、じゃあ、よく寝ていい夢を見なさい」 「ありがとう。先生もね。宵ちゃんまた明日」 祖父江と真尾は、少年棟から夜の世界へと消えていったー

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