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夜明け前の一仕事

「え?まーちゃんが起きるまでここにいてろって?」 「そう」 「そやかて、他にも業務あるんやけど?」 周防はどうしていいか分からず頭を掻いた。 「日勤に回せるものは回せばいい。真尾には俺から説明するから」 「いやいや、臣くんの排泄とか…由宇くんの吸引とかは外せれんし」 「そっちは俺がやろう」 「えーと…別に先生が添い寝すりゃあええんちゃいますの?」 「目覚めて俺がいたら、泣くだろう」 「えーまさか。泣きはせんと思う…。由宇くんなら尻尾振って喜びそうやないですか?」 「由宇はな。なぜか懐いたが…基本、患者に怖がられてるから遠慮しておくよ」 「ほんなら、、分かりました」 「助かる。何かあれば連絡をくれるかい?」 「了解」 周防は瀬谷の依頼通り真白の隣で、うとうとしながら過ごした。 「よー寝てるわ…よかった。起きたら採血せんとなぁ…」 真白の前髪を人差し指でピンピンと弾いていると、真白の目があいた 「あ、起きた?おはよーさん」 「周防…さん?」 「正解。朝方たいへんやったなぁ。覚えとる?」 「?」 「覚えてへんか?怖いーって泣いとったんやで?けいれんしとったし」 「覚えてない…でもおしり痛いからなんかした?」 「した。痛いん?大丈夫?」 「大丈夫。けど怖いな。まーちゃん覚えてないもん」 「怖がらんでええよ?病院なんやからすぐ対処できるし」 「うん。周防さん、ずっといてくれたしね」 「せやで?」 「ありがとう。周防さんやさしい」 「そっか?ほんならそんな優しい周防さんが採血したるな」 「パードゥン?」 「採血。repeat after me」 「採血…」 「覚えたての英語使えたなぁ、まーちゃん。えらいやん」 どんよりモードの真白とは正反対に周防は明るい態度で真白を褒め、採血の支度を始めた。

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