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ぎゃー

「……真尾、検査データくれる?」 おふざけモードから真剣な口調に祖父江は変え、由宇の聴診を何度かした。 「由宇、苦しくないか?」 「別に。もう慣れたし」 「先生?」 由宇より臣の方が不安気に祖父江の顔色をうかがった 「データです。静脈血…じゃないですよね?低すぎますけど」 「苦しさをあまり感じていないようだから可能性はある。だが…肺雑がひどい」 「あー…臣くん、やっぱりベッド戻ろう」 やりとりを見て奈南が臣を手招き 「え?奈南さん、由宇なんかされる?」 「される…流れかな」 「だったら励ましたい」 「いや…暴れるだろうから退いててほしいかな。終わったらぎゅうでもちゅうでもなんでもしてくれていいから」 臣は頷きベッドから降りた 「え…っちょ……臣、行かないで」 「ごめん、由宇。なんかよく分からないけど頑張れ」 「真尾、奈南採りなおすぞ」 「「はい」」 「由宇くん両手いい?」 「奈南さんやだぁっ。押さえないで。暴れないから!」 「んー…ごめんねぇ。針が抜けて血が噴き出すと大変だからさ」 「針って注射すんの!?どこに…っえほ…こほ」 「ほらほら由宇。興奮するな。咳が出る」 「先生っやだよ。考えなおして。俺今日何回針刺されんの?」 じわじわと目を潤ませ由宇は涙を垂らした 「刺す前から泣くか…困ったなぁ」 「先生、針を」 「ん」 「ぎゃっ。そのオレンジの蓋みたいのついてるやつまたやんの!!手首にしたやつじゃんっ絶対やだーぁ」 「ちょ…っ由宇くんっすっごい力」 奈南は由宇に力負けし顔を歪めた 「危険だな…」 「どうします?先生」 「やらないわけにはいかない。仕方ない…ペンレステープ貼るか」 「分かりました」 真尾はいったんステーションに帰り、しばらくしてシール状の物体を持ってリカバリールームに帰ってきた 「由宇くん魔法のシール貼ろうか」 「何?」 「刺す時の痛いのを取り除いてくれるシールだ。これで怖くないからやれるな?由宇」 「う…うん」 「貼るな?触るぞ」 祖父江は由宇の足の付け根に触れ、そこにシールを貼った 「ひく…っうそ…そこ…すんの…」 「由宇大丈夫。大丈夫だから。真尾、奈南血中濃度マックスにあがるまで時間あるから残務をしてくるといい」 「先生は?」 「あやしつつ、逃亡防止かな?逃亡しそうだ」 肩を揺らして泣く由宇を祖父江は抱きしめた

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