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周防と臣

「おーみくん?ええかな?」 今日に限って師長さんおらんとか…お参りの効果はまだ無いっちゅうことか? 師長さんならすぐご機嫌さんにできるんやろうけど、俺自信ないわ にしても…臣くん布団もぐって出てくる気配ない… どうしたらええんや? 「なぁ臣くん」 患者さんのベッドには座るなって学校では教わったけど…祖父江先生にならってちょっと座らせてもらお ギシー… 「え?」 ベッドに座られ臣は驚き、口と鼻を隠したまま泣きはらして赤くなった目を布団から出した 「おはようさん。朝から辛いな?周防さんも泣きそうやで」 「べっぴんさんが、泣いたらだめ」 「なんで?」 「綺麗なお顔がくしゃくしゃになるとよ」 「せやな?でも、見てるだけしかできへんってくやしいやんなぁ」 「周防さん…」 「でも、泣いとったら由宇くんも辛いんちゃうかな?」 「え?」 「俺のせいで…って思うと思わん?」 「由宇…優しかもんね」 「そしたら出てき?」 「うん」 布団を退けて、臣は周防に顔を見せた 「ええ子」 「周防さんも優しかね」 「ここん人はみんな優しいんちゃう?」 「瀬谷先生は違う!怖かよ?せやけん好かん」 「怖いかぁ…でもええ先生やで?」 「悪いとは言ってなかもん。怖かだけ」 「先生がやっとることって間違いと思う?」 「ううん。思わんけん…でも」 「でも?」 「譲れんもんがあるたい」 「頑固やな?」 「あきらめないのが取り柄やけん」 「ええ取り柄やなぁ。頑固さでは俺も負けん自信があんねんけど…ってわけで聴診させてや?」 「どんなわけなの?」 「よー分からん」 「変なの」 「ほら、聴診器あてような?」 「…分かった」 臣は服をまくり、おとなしく聴診を受けた 「お腹痛いとこない?」 「なかよ」 「お腹押すで?」 「うん」 「ええよ」 にっと笑い周防は臣の服を整えた つられて臣も笑うと 「周防さんもベッドに座るとね?」 「ん?」 「座る人とそうじゃない人がおるとよ?」 「あー、基本は座らんやろうな。患者さんに失礼やし」 「失礼なんやね?でも俺は好き。祖父江先生はよく座ってくれるから嬉しい気持ちになる」 「ほんと、祖父江先生好きなんやな」 「周防さんも好いとーでしょ?」 「へ?」 「先生に褒められて赤か顔してるの見たばい」 「い、いいつ?」 「動揺しとる。可愛いかね周防さん」 周防は臣に心を見透かされて照れ、臣から視線を外した。 「よー見とるな、臣くん」 「だてに入院生活長くないばい」 「さすがです。臣先輩」 「ふふ。周防さんそろそろ行かないといけないんじゃなか?」 「え?あ…そうやな。またな」 「うん」 臣は機嫌を取り戻し周防に手を振り、周防は先生に報告に向かった

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