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バーバー周防
「もう疲れたやろうで、車椅子乗って行こうな」
「歩けるけん…車椅子はよかよ?」
「頭、洗うと意外に疲れるんやで?悪いことは言わん。甘えとき」
「分かった」
臣は周防の手を取り、車椅子に座り
周防に連れられて風呂場横の洗髪室へと来た。
「へぇ、こんなとこあるとやね」
「小児科にはなかったん?」
「お風呂はあったとよ?頭だけの時はでっかいおむつみたいの頭の下に敷いてやっとったばい」
「ベッド上洗髪やな。あれはあれで技術いるんやで?シーツ濡らしてまうからな。んじゃ、こっちの倒れる椅子に座ってや」
「うん」
周防は臣を促し椅子に座らせ、防水ケープをつけると後ろに椅子を倒した
「倒れるで?」
「床屋さんって仰向けじゃなかよね?」
「せやな。でもやることは一緒やからな」
お湯を出し、臣の髪に優しくシャワーを当て
「熱ない?」
「ちょうどいい」
「ん。じゃあ全体濡らしてくで」
「ん…ぅ」
「うなじあたると力抜けるよなぁ。分かる!そしたらシャンプーな?」
洗われているうちに臣はニマっととろけた表情を浮かべ
その顔を見て、周防はにっと笑い返し
「気持ちええの?」
「うん。周防さん上手」
「そりゃよかった。ここもっと気持ちええで」
「ぁ…ん…」
「悩ましい声出るやん」
「えっち」
「かわいいでええやん?すすぐで目、閉じとり?」
「うん」
「ええ髪質やん。ちゃんと食べれるようなったらもっとええ髪になるんちゃう?」
「食べるの怖かもん…」
「まあ、ぼちぼち練習あるのみやな。よし、 OK」
周防はタオルで臣の頭を包み、椅子を元に戻し「息、苦しなったりしてへんな?しんどいとかない?」
「大丈夫。気持ちかった」
「よしよし。そしたら拭こな?」
「きゃ…わしゃわしゃ好かんー」
「我慢我慢。しまいにドライヤーな?」
和気あいあいと周防と臣は髪を乾かし、車椅子に乗り換えるとリカバリールームへ戻った。
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