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フルネーム

「さっき消毒したのにまたすると?」 「汚染したからね。前に一度やったから大丈夫と思うが…周防、10フレを用意してもらえるかい?ここに無くてね」 「10?小児用じゃ…」 「1mmもない違いだが、前回細めで12を使ったがかなり痛がっていたように見えたからね」 「じゃあ、取ってきます」 周防がカテーテルを取りに部屋から出ると、真尾は臣の頭を撫でながら臣の気をそらそうと話し始めた 「臣くん、よかったね?先生ちゃんと考えてくれてるよ?先生のこと、あんまり好きじゃないみたいけどちょっと嬉しくない?」 「嫌いなものは嫌いやけん、むずがゆいだけばい」 「それを嬉しいって表現するんだけどな?」 「よく分からん…先生はまだ会ったばかりっち、怖かとこしか見えてこん…。長くおれば〝瀬谷朱雀(スザク)〝って人間のよかとこが分かるやろうけど…それがいつかは誰にも分からんばい」 「悟ってるね、臣。それより、フルネーム知っていたのかい?」 「名札書いてある」 「よく見てるね。ちなみにもしかしてみんなのフルネームも?」 「知っとーよ?」 「祖父江実継先生、真尾宵ちゃん」 臣は指さし名前を呼び、ちょうど戻ってきた周防をさし 「周防雅宗さん」 「ん?どうしたん?」 「臣くん、みんなのフルネーム覚えてるみたい」 「師長それ本当?てことは先生らのもやったりする?」 「知ってたよ。瀬谷先生朱雀先生って言うんだって」 「臣くんすごいやん。病院のことはなんでも知ってそうやなぁ。先生、これ。よっぽど大丈夫やろうけど2セット持ってきました」 「ありがとう助かるよ。じゃあ、やっていこうか」 瀬谷の言葉を聞き、祖父江は臣の片足を閉じれないように押さえた 押さえられると臣は首をふり嫌がり 「祖父江先生…押さえちゃ、やぁ」 「暴れると危ないから。後、力が入りすぎだ」 話しているうちに瀬谷は消毒を始め、周防がカテーテルの用意をしているのを視界に捉え臣は震えた。 あれ…痛かったやつばい あん時は調子ば悪かったけんなんとか耐えられたけど、今日は違う 怖かよ 助けてー

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