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おはよう
「…由宇…分かると?」
由宇の手を持った臣が由宇に尋ねた
「どうしたん?臣くん」
「由宇が手ぇ握り返した気がしたと」
「起きたんかな?先生」
「ああ、ちょっと診てみるね」
臣はリカバリーの隅の椅子に移動し、心配そうにことの成り行きを見守った。
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おぼろげな視界の中に臣が見えた
あれ?
俺…なんだっけ?なんかおかしな感じ
咳は…止まってる
でも、なんか体が重い
それになんか鼻が…なんだろ?
「由宇…分かるようなら手を握り返して」
臣と思っていたら今度は瀬谷先生の顔が見えてあったかな先生の手が手に触れ、ぎゅっと握り返した
見たような見たことないような若い医者の顔、それに周防さん。…変な顔。そんなに見つめなくても良くね?
俺の顔なんか付いてんの?ってくらいみんな見つめてる。
周りを見回すと臣がやっぱり見えた
「おみ…?」
「由宇!先生っ由宇、しゃべった。もう安心?」
「んーどうかな?まず機能の回復を確かめないといけないからね」
「離握手可、発語可。見当識障害も無さそうですね」
佐渡が瀬谷に発言すると瀬谷は頷き
「うん。でもちょっと待って。由宇、今日が何日でどこか分かるかい?」
「え…病院にいんのは分かるけど…いま朝?あれ?祖父江先生と寝たはずなのに…それに、臣…尻尾抜いたばっかで尻痛くないの?」
「え…それって…」
「見当識障害出てるね。由宇、驚くと思うが臣のイレウスチューブを抜いてから約1週間経つ」
「は?」
由宇は状況が飲み込めず、助けを求めるように臣を見ると臣は黙って頷いた
「え…マジで?だってそんな長いこと寝てたらご飯とか?」
疑問に思っていると臣が鼻を指差し、由宇は察した。
この鼻の違和感って…
嘘だろっ!チューブ入ってる!!
由宇は呼吸を荒くし、錯乱しながらチューブを力まかせに引っ張り抜き、チューブを床に放り鼻から血をダラダラと流しながらベッドから降りようとした
「あかんっ。この、どあほ!」
「先生っ、せん妄でしょうか」
「佐渡くんセレネースを側管から入れて鎮静を。周防は臣を部屋に返してメンタルケアをしてくれ」
「ゆ……由宇……っ」
凄惨な光景に臣は固まり、由宇の辛さにシンクロして涙を流した
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