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師長も代理もいない

「え?師長、入院しとるってほんま?しかもうちの病棟やて?」 朝の申し送りでステーションはざわついた。 「まあびっくりするよね。緊急も緊急だったし…ぼくもびっくりしたよ。尿路結石で熱はすごいし嘔吐もあったみたいでさ」 「それで大丈夫なんですか?」 「んー…今朝も仙痛発作あってだいぶ苦しんだみたいだけど…」 「みたい…って?」 「ナースコールくれなくてね。坐薬、イヤみたい。で、さっき先生が内服に変えてくれたし、ひどいようなら注射できるように指示出してくれたから、ナースコールしてくれると思うけど一応気にかけた方がいいかも」 「坐薬イヤって、ここの子たちみたいなこと言うとん?挿せたは挿せたんです?」 「うん。あ、でも内緒で。本人、恥ずかしがってるからこの件には触れないであげてほしい」 「分かりました。ちなみに師長、入院して…奈南先輩明けとなると今日明日うちの病棟リーダーどうなるん?」 「今日は牟呂がやってくれればいいよ」 「む、無理ですよっ。4年目が師長代理なんてできるわけ…っ」 「いるメンバーでまわすしかないでしょ?」 「いやいや、ほかに今日先輩2人いるんだから」 「そこは順番でね。少なくとも1週間は入院して、復帰まで数日は休むだろうし。公平にいかないと。まあ師長自体は入院中だけど病棟内にはいるから相談できるし。一応、泌尿器科の師長には伝えてあるからなんかあったら指示あおいで?」 「泌尿器科?」 「瀬谷先生の元所属先だから話が分かると思う。じゃあ、あとよろしく」 奈南が退勤すると残された周防、牟呂、他2人の看護師はそれぞれ業務に入った ・ ・ 「師長、おはようございます」 「おはよう、牟呂」 牟呂が部屋を訪ねると真尾は体を起こそうとベッドに手をついた 「あ、いいですよ。寝たままで。バイタルとらせてくださいね」 牟呂が制すると真尾は横になり 「ごめんね」 「大丈夫ですよ、師長。ゆっくり休んでください。痛みはどうです?」 「今は大丈夫」 「痛くなるようなら言ってくださいよ?由宇くんの検査の手伝い終わったらお下、洗いにきますね」 「夕べカテいれたばかりだから明日でいい…かな」 「だめですよ?」 「う…。大丈夫だから」 「宵さんっ!」 急に名前で呼ばれて真尾はビクッとして 「だって…」 「だって、じゃないです!」 「怒らないでください。怖い…」 「あなたの恥ずかしいところは全部もう見たんだし、体の関係も持ったんだから恥ずかしがらずに洗われてください」 「やぁだ」 「やぁだ。って子どもじゃないんだから…宵さん?どうしたら洗われてくれるの?」 「実継さんを呼んできて?雫、お願い」 「実継さんはいま処置室で準備中。そのまま由宇くんの採血、臣くんの検査で午後は外来だから無理です。諦めてください」 「無理ぃっ」 「なんでそんなに嫌がるの!とりあえずもう行かないといけないから行くけどまた来ます」 牟呂は慌ただしく部屋から出ていき、ステーションへと帰っていった

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