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2人の後悔

「せ…んせ…っ俺、絶対戻らない…から」 由宇が体を起こし声を振り絞ると、瀬谷は由宇を迷わず平手打ちした。 「…っっ」 不意打ちでくらったため唇を噛み、血を滲ませ 「帰るぞ。いいね?」 「…」 瀬谷にしっかりと横に抱き上げられ、由宇は涙をにじませながら瀬谷にしがみついた。 立ち尽くし呆然として、その光景を眺めていた臣が声を震わせ 「由宇は悪くなかよ?俺が検査怖いなんて言ったから逃げようって話になったけん」 「その話は後で聞く。しかし、思ったとおりここにいてよかった。臣は小児科時代から何かあるとここに来ていたからもしや…と思ってな」 「ごめん…なさい」 祖父江は無表情のまま臣の手を引き、早歩きで歩き病棟を目指した。 ・ ・ 聞こえたコード解除の放送に真尾は安堵しながら、ちりぢりになった職員にそれぞれ電話をかけ解除を伝えた。 「ふぅ…とりあえずよかった……」 真尾は大きくため息をつき、机につっぷし2人の到着を待った。 戻ってきた他病棟職員に礼を言うと、最後にさゆりが 「宵くん、いなくなった子にあんまり怒ったらダメだよ?とりあえず早くに見つかって良かったね?」 「うん、助かったよ。さゆりありがとう」 「無理はしないでね?あなた頑張りすぎるから。じゃあね、おつかれ」 病棟に1人になると真尾はパソコン作業をはじめた。

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