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スパルタなんてやぁだっ(泣) 3

「由宇」 「…やっ」 瀬谷に体を引きはがされると由宇は慌てて、瀬谷に手を伸ばし不安がり 「大丈夫だから。向きを変えるよ」 先に自分が両足を伸ばしてベッドボードにもたれ、足のあいだに由宇を祖父江に対面にさせる形で座らせ、後ろから羽交い締めにするように抱きしめ、両手をつかみ 「ほら、怖くないな?手も繋いでてあげるから」 「うん…」 瀬谷と由宇が体勢を変えはじめたのを見て、祖父江は支度をはじめ 「さぁてと…」 祖父江は白衣を脱ぎ椅子の背にかけ、袖のカフスボタンを外して周防に放り袖をまくりあげ 「周防、保管よろしく」 「へ?わ…分かった。な、なあ?祖父江先生?やる気まんまんやけど…あんまり泣かせんといてや?」 「それは無理なお願いだな。おまえに俺が望むのは、そのカフスは大事なものだから無くすな。由宇に適宜、水分とらせてやれ。最後まで見届けろ。以上」 「なんなん、それ?そない大事なものなら付けてこんかったらええのに」 「これはここぞという時に付けてくるお守りみたいなもんなの。無駄話はやめ。始める」 祖父江は道具の入ったバッグからローションボトルを出し手にとった 「瀬谷先生、ごめん…やっぱり怖い」 「大丈夫。祖父江に任せればいい。少しスパルタかもしれないが退院へ一歩確実に近づく」 「スパルタなんてやぁだっ……っえ…っく…えん…ふ…やだぁ」 祖父江から顔をそらし、泣きながら由宇は瀬谷に爪を立て抵抗しようとしたが、爪を切られてしまったために抵抗も無駄に終わった 「周防さんのばかぁっっ」 「へ?俺に言うとるん?バカって? つーか、なんでバカ言われにゃならんねん。バカは無いやろ、バカは。もしかして爪切りのことで怒っとるんやないやろな? 爪、切っとかな由宇くん引っ掻きよるやん。違う?違わないやろ?今まさにやりよったんやからっ」 バカと言われて切れぎみに周防はまくしたて、まくしたてられた由宇はその剣幕にひるみ言い返せずにおとなしくなった。

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