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宵さん、実継さんの出会い
キスを終え、2人は向かい合わせで横になって手を顔の前で繋いで話をしていた。
「実継さん…さっき、イかずじまいだったでしょう?大丈夫?」
「いや…今日はいい。怒らせておいてそんなことは頼めない」
「自分へのお仕置きなの?」
「そんなとこだ」
「あなたらしい」
「宵…はじめて見た時からずっと愛してる」
「恥ずかしい過去ですね」
「あの出会いがあったから宵が気になるようになったんだから恥ずかしがらなくていい」
「恥ずかしいですよ…指導者さんにお叱り受けて悔しくてトイレでボロ泣きしてる所を見つけられたのが最初の出会いだなんて。しかも、当たり散らしたし…」
「最初は、急変かと焦ったんだぞ?なのに緊急解錠したら自分好みのかわいい子が目を真っ赤にして泣きじゃくっていたんだから。運命かと思うだろ?」
「そのまま医局に連れ去るくらい?」
「そう」
祖父江は真尾の額に額を、くっつけ
「あの日から気になって仕方ない。かわいいくて…忘れられない」
・
・
「っう、…ひっ…ぐすっ」
若かりし真尾は指導者にお叱りを受けその悔しさにトイレにこもり泣きじゃくっていた
ドンドンーっ
「おいっ大丈夫か?開けるぞ」
苦しそうな声に慌ててまだ医者になったばかりの祖父江は扉を叩き、緊急解錠した
「!?」
(誰…っ)
祖父江は固まった。
あまり大きな声で言えないが、祖父江は同性愛者で、物心ついたときからそれだった。
開けた中には自分好みの顔と体つきをした青年が真っ赤に目を染めて泣いていた
やばい…これは、、
もっと泣かせたい…そう思わせるほどかわいい
しかし
なんでこんなとこで泣いて?
「大丈夫?」
「…だ、大丈夫です」
真尾は警戒し、解錠してきた人物と扉の隙間を塗って逃走しようとした
「あの…失礼します…驚かせてすみませんでした」
「ま、待って。看護学生くんだよね?その制服。何かあったんだろ?話したら楽になる。話してごらん」
「だから?」
言い方にカチンときた真尾は泣き顔のまま目の前の人物を睨みあげた
「看護学生だけど何?男が看護学生で悪い?医者のあなたには分からないし、話す義理も無い」
「たしかにそうだが…。看護学生を悪いとは言っていない。男性看護師は必要な存在だし、頼りになる。トイレなんかじゃろくに話もできないから、行くよ」
祖父江は勝手に手を取り、嫌がる真尾を小児科医局へと連れ込んだ
「な…なんでこんなとこ!看護学生が入っていい場所じゃない」
「この時間は出払ってる。泣くならあんなとこで泣くんじゃなくここで泣け。話ぐらい聞いてやるし、不安なら抱きしめてやる」
「…変な人!話したところで楽になるわけないっ」
「えと、ま…お、よい?すまない先に謝っておく」
制服の名札を読み上げ、祖父江は宣言どおり先に謝ると真尾を抱きしめた
「なっ!あなた誰っ。僕は男ですよっ抱きしめるなら女の子にしたらどうです!?」
「俺は小児科の祖父江実継。別に変な感情で抱きしめたわけじゃない。人の温もりと心音は人を落ち着かせるから。おせっかいな抱き枕とでも思えばいい」
「は?意味不明です…頼んでないっ」
「だからおせっかいなんだ」
声を荒げジタバタする真尾の背をトントンと叩き祖父江は落ち着いた態度で抱きしめ続けた。
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