458 / 1217

由宇、緊急輸血

「出血…思った以上に多いですね。先生」 使い物にならなくなったガーゼを佐渡は新しいガーゼに変え、両名の医師の顔を見た 「そのまま止血続けて」 「はい、瀬谷先生」 「う…ぅ、気持ち……悪い…痛い」 「瀬谷、由宇が嘔気を訴えてる。膀胱鏡抜いてやれないのか」 「出血点が分からない。抜くことでさらに大量の出血が起きないとも限らない以上、安易に抜けない」 「周防、由宇のバイタルは?」 「血圧100/50低下してます。祖父江先生」 「周防、検査台、形態変えて…一先ず、台をフラットに…下肢挙上を」 「はい。祖父江先生」 「止血剤入れるか?瀬谷」 「ええと…」 瀬谷は想定外の事態に、思案していた どうする…やらなきゃいけないことはたくさんあるが… 「周防、ステーションに帰って真尾に伝えろ。緊急輸血の可能性あり。輸血請求の依頼を」 「分かりましたっ」 「落ち着け…朱雀。パニックになってるのは俺もみんなも同じだ。いつもどおりひとつずつクリアしていくぞ」 「すまない、実継。アドナを静注しようか」 「ああ」 「祖父江先生ぇ…痛いぃ…うぇぇっ」 「痛いな」 「由宇。注射するよ」 瀬谷が注射器を片手に近づくと由宇は取り乱した 「やぁあっしないっしたくない!いらない」 「血が止まらないから血を止めるんだよ。針は刺さない。点滴の側管からゆっくり入れるから落ち着いて」 「祖父江先生…助けてぇ…瀬谷先生が怖い」 「大丈夫。瀬谷先生は瀬谷先生のままだ。今は怖く見えるかもしれんが、終わったら優しくてのほほんとしいつもの瀬谷に戻るよ。だから落ち着きなさい。興奮すると出血が増える」 「ふぇぇ」 「ふぇぇって…」 祖父江は由宇の頭を撫で、額に何度か口づけ 「幼児化してるな。よしよし」 「降りたい。降ろして…っ」 「由宇、ちょっと待ってろ。な?いまはまだ器械がナカに入ってるから、安全にそれが抜けたら降ろして…抱っこでも添い寝でもなんでもしてあげるから今は我慢な?」 祖父江があやしている中、瀬谷はゆっくりと止血剤を注入していった

ともだちにシェアしよう!