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頑張れ、由宇くん
ヘルプコールで呼ばれた瀬谷は、くまのパペットを両手に付けてリカバリーへと来ていた。
エネマグラによって疲れ切っていた臣と由宇の2人は目を点にしてそれを見つめた。
「くまだ…」
「くまだね」
「2人ともよく頑張ったね。ぼくたちくまちゃん、こんばんは」
ニコニコ笑いながら瀬谷はくまのパペットに喋らせ、2人の頭を交互に撫でた。
「えーと…先生?ゲーセンで取ってきたぞ的な?」
真顔で奈南が尋ねると、それに反比例したかのような笑顔で瀬谷は頷き
「その通り。かわいいだろ」
「小児科医向いてるんじゃないですか?先生」
「んー…それは無理かな。泣く子は苦手だ」
「泣かせに来たのに?」
「痛いとこつくね。介助してくれるかい?」
「介助はしますけど…それは…ちょっとしまってくださいよ?」
「何故?かわいいじゃないか。由宇くん、頑張れーってさ。2人にプレゼントだよ」
「細菌の温床に…」
「無菌室じゃないから大丈夫」
「2人だけ特別扱い?」
「他の子にも実はあげてる。取るのが趣味なだけで欲しいわけじゃないからね。まあとりあえず処置の邪魔にはなるから外す。はい、臣。こっちは由宇に」
「「え…」」
渡された2人は反応に困ったが、臣はすぐに空気を呼んでパペットをはめると
「由宇くん、頑張れー。応援しとるとよ」
「かわいい子がやるとかわいいね。由宇は?」
「う…考えとく」
照れて顔を背け、由宇はダランと体を投げ出し
「やるなら早くやってほしい…怖いから」
瀬谷は真面目な顔に戻り
「分かった」
膀胱留置の準備を始めた
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