484 / 1217

頑張れ、由宇くん

ヘルプコールで呼ばれた瀬谷は、くまのパペットを両手に付けてリカバリーへと来ていた。 エネマグラによって疲れ切っていた臣と由宇の2人は目を点にしてそれを見つめた。 「くまだ…」 「くまだね」 「2人ともよく頑張ったね。ぼくたちくまちゃん、こんばんは」 ニコニコ笑いながら瀬谷はくまのパペットに喋らせ、2人の頭を交互に撫でた。 「えーと…先生?ゲーセンで取ってきたぞ的な?」 真顔で奈南が尋ねると、それに反比例したかのような笑顔で瀬谷は頷き 「その通り。かわいいだろ」 「小児科医向いてるんじゃないですか?先生」 「んー…それは無理かな。泣く子は苦手だ」 「泣かせに来たのに?」 「痛いとこつくね。介助してくれるかい?」 「介助はしますけど…それは…ちょっとしまってくださいよ?」 「何故?かわいいじゃないか。由宇くん、頑張れーってさ。2人にプレゼントだよ」 「細菌の温床に…」 「無菌室じゃないから大丈夫」 「2人だけ特別扱い?」 「他の子にも実はあげてる。取るのが趣味なだけで欲しいわけじゃないからね。まあとりあえず処置の邪魔にはなるから外す。はい、臣。こっちは由宇に」 「「え…」」 渡された2人は反応に困ったが、臣はすぐに空気を呼んでパペットをはめると 「由宇くん、頑張れー。応援しとるとよ」 「かわいい子がやるとかわいいね。由宇は?」 「う…考えとく」 照れて顔を背け、由宇はダランと体を投げ出し 「やるなら早くやってほしい…怖いから」 瀬谷は真面目な顔に戻り 「分かった」 膀胱留置の準備を始めた

ともだちにシェアしよう!