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ステント? 2

「まず、やる処置の名前だけど…尿道ステント留置という」 紙を由宇の方に向け、尿道ステント留置とクセのある字で瀬谷は書き、次いでおとこの姿図を書くと口を開き 「今は膀胱留置カテーテル、ちんちんの穴から管を通して膀胱の中で風船を膨らませて常に尿が外に出る状態になってる」 「うん。それは分かった。ステントって?」 「ステントは尿路に結石ができた時なんかにやるんだけど…尿道狭窄にも使うことがあってね膀胱鏡を使ってステントという細いチューブを腎臓から膀胱に入れて、狭くなっている道を拡げる処置になるんだけど由宇の場合はここ…」 膀胱と前立腺の絵を描いて矢印を前立腺のど真ん中に書き 「ここの狭窄している部位に入れる」 「前半の説明要ります?先生」 熱心にメモを取りながら佐渡は瀬谷に突っ込み 「本来は要らない。だが由宇は医師志望だから教えた。俺はその子その子に合わせた説明をしているかな。実際に触らせたりもするしね。説明に正解はないんじゃないかな」 「分かりました。ありがとうございます」 「うん。由宇、理解はできたかい?」 「痛い?」 「痛い」 「……」 「でも、痛みを減らしてあげることはできる」 「怖いな…」 「由宇くん、今よりずっと楽になる。痛みは…どうしても出てしまうけど交換の回数はカテーテルよりずっと少ないし、常にぶら下げる必要は無いからうっとうしさからも解放される。痛い怖いからってやらずに逃げるのはよくない。 挑戦してほしい。研修医のが俺が言っても響いてこないかもしれないけど…」 「佐渡先生はさ…冷たい感じって思ってたけど、違うよね。なんでそんな熱心なの?俺の担当医って言っても3週間のことじゃん?退院しようが入院そのまましてようが先生の成績には関係なくない?」 「由宇、佐渡先生は由宇のことを思って残り数日だけど応援してくれているんだよ。分かるかい?」 「……」 由宇は佐渡に向けて両手を上にあげて 「抱っこ。処置する。決心鈍らないうちにあっちの椅子に移して」 由宇は手を震わせながら、処置を受けることを決めた

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