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10月6日 2
「本当に!由宇っ」
臣は由宇にガバっと抱きつき、自分のことのように喜んだ
「おめでとう。よかったね、由宇!俺も嬉しかよ」
「ありがとう、臣」
「退院したら通院のときにでもお見舞いに来てね?待ってると」
「あ、あのさ臣?」
聞くかどうか躊躇い、由宇は視線を泳がせ
「答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど…その、何があったの?どうして食べれなくなっちゃったの?」
「…この喋り方が…原因かな?あとちょっと小柄やけん成長が遅かよ。まわりと違うっていうのはそれだけでイジメの対象になるけん。イジメって言っても大したことなかよ?ただ、からかわれただけばい」
「大したことあるだろ?食べれなくなるってよっぽどだよ!」
「吐いちゃうけん仕方なか。当時は寝れなかったからこれでもよくなったっちゃけん」
「…大雅さん…とは普通に見えたけど、実は違ったりするの?」
「大雅は幼馴染やけん、庇ってくれたとよ?標準語教えてくれようとしたこともあったと。でも、断った。産まれ育った言葉で喋るのが何が悪いか俺には分からん。だから俺はなおさんって決めたと。俺、頑固やけん…自分の考え曲げれん」
「臣…強いね」
「弱かよ。ただ頑固なだけ。だけん、入院するような騒ぎになるほどになったと。祖父江先生にはまだ、話せとらん…」
「え?ちょ、それじゃ、退院の、たの字も出てこないじゃん!瀬谷先生は知ってる風だったけど、主治医が知らないってまずいだろ」
「もう解決ばしとると。後は俺の心の問題やけん、必要があれば心理士さんが先生に伝える。俺からは言いたくなか」
「なんで?」
「嫌なものは嫌」
「頑固だね、臣。…あの、話してくれてありがと。先生にも言わないことをさ」
「由宇は…由宇なら話しても大丈夫と思ったけん、話した。先生にはまだ怖かよ。うまく、話せる自信がなか」
「退いちゃダメだよ、臣。先生なら受け止めてくれるって」
「うん。考えてみる」
塞ぎこんでいた臣の気持ちが由宇のおかげで、少し晴れて、臣はニコっと笑った。
仲間ってよかね。由宇、大好き
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