518 / 1217
退院間近なのに体調不良
午後、瀬谷とともにリカバリールームへと来た紫藤は扉に手をかけたまましばらく考えていた
「どうした?紫藤くん」
「あ、いえ…午前中に由宇くんにきつく言い過ぎてしまったのでどう対面していいものか少し考えていました。コミュニケーションを取ると言ってもどうしていいものか…」
「難しく考えなくていい。機嫌が良ければ向こうから勝手に話しかけてくるし、その場の雰囲気に合わせて対応すればいい。由宇は意地っぱりなとこもあるが、甘えん坊な一面もあるから抱っこをせがんでくる時もあるし、こっちが心を開けばあっちも応えてくれる。逆に身構えればあっちも警戒するから気楽に」
「抱っこですか?彼は高校生では?よく分かりませんが…はい」
紫藤は一息ついて扉を開けると中に入った
「こんにちは、由宇くん臣くん。由宇くんは体調に変わりは無いですか?」
「げ…な、無い…無いから大丈夫」
由宇は気まずさに紫藤から視線をそらした
「本当ですか?視線が合わないのが気になります」
ずいっと紫藤は由宇の顔を覗きこみ、見つめられた由宇は硬直し、臣は落ち着きなくそわそわした
「紫藤くん、あんまり詰めよらない。由宇だけじゃなく臣まで怖がってる」
「すみません…なかなか難しいですね。私は怒っているわけではありません。きみの体調が心配なだけです」
「えと…その…ちょっと熱っぽい…」
「え…」
紫藤は慌てて由宇の体に触り、驚いた由宇は叫んだ
「わーっな、何!?」
「熱い…由宇くん、腰を叩きますよ」
「や…ちょ、痛いっ痛いから」
「瀬谷先生…ステント留置後のこの熱…腰の痛み…腎盂腎炎起こしてますね。つい最近も疑いありましたよね?尿逆流でしょうか?」
「可能性はあるね。由宇、熱を一度測ろう」
「は…測らないって言ったら?」
「由宇、だめっ。ちゃんと診てもらわなきゃ。調子ば悪くなること多すぎやけん。先生の言うこと聞いた方がよかよ!せっかく決まったのに退院延期になったら大変ばい」
先生2人が注意する前に臣が由宇に叱責すると紫藤が感心した目で臣を見つめた
ともだちにシェアしよう!