525 / 1217
由宇 退院前日
迷子のみわと出会ってから数日で由宇の体調も回復し、いよいよ退院前日になった。
「結局、由宇くんリカバリーから出んまんま退院前日になってもうたな、しー先輩」
「臣くんも由宇くんもお互いに一緒にいたがるから仕方ないね。明日の夜の臣くんが心配だよ」
「夜勤やなくてよかったぁ。奈南先輩がんばれやな」
「雅宗…それ、先輩に聞かれたら怒られるよ?」
「せやな?ここにいたらとても言えんわ〜」
周防と牟呂が話しているとしばらくして、トントンと叩く音がした
「看護師さーん」
「ん?あ、まーちゃんやん、どうしたん?」
「ゆっくんに会いにきましたー」
「そっかそっか。いいよ、おいでおいで」
「由宇くん喜ぶで!でも、長いことはおったらあかんで?由宇くん体調悪なったら困るで」
「うん。分かった」
真白は周防と牟呂に案内されて、リカバリーへと入り
「ゆっくん、おみくんっ。こんにちは」
「まーちゃん!来てくれたとね?」
「うん。ゆっくん、おうちに帰るって聞いたから」
「ありがとう、まーちゃん。まーちゃんも早く帰れるといいな」
「うんっ」
「まーちゃん、明日の夜さちょっと会いにきてほしかよ。まだここから出れんけん、由宇がいなくなったら寂しか」
「いいよ!でも、なんででちゃダメなの?」
「血液検査の数字が安定しないのと、お腹の音が弱いのといろいろだって」
「なんかむつかしくてよく分からないけど、いろいろあるんだね」
「そうらしいばい。祖父江先生、心配性みたいやけん慎重なんだと思うとよ」
「なんだかんだで祖父江先生…いい先生だったな。最初は般若みたいなんて思ったけどさ。瀬谷先生にはこれからも通院で会うだろうけど、祖父江先生にはもう会わないのかーって思うとちょっと寂しいかもしんない」
「祖父江先生に直接言ったらよかよ?喜ぶと思うばい」
「やだよ。恥ずかしいし」
3人はしばらく会話をし、一通り話し終えると真白は立ち上がり
「明日、ばいばいしにくるね」
「ありがとう、嬉しい」
「またね!」
手を振り自分の部屋へと帰った。
真白が帰った後、由宇は本当に退院すんだ…俺。と、心の中で思い涙を浮かべた。
「由宇?」
「あ…いや、なんか目にゴミが…」
「今度、由宇のがここに来るときは医大生さんやね?それまでには俺も退院しとると思うけん。また会おうね。約束」
「うん、約束」
2人は向かいあい固く手を握りあった
ともだちにシェアしよう!