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宵さん、再発 3

「由宇!佐久間先生、オリエンテーションは中止。今から救外に行くから付いてきてくれるかい?」 「え?救外って急患?」 「早く。もう救急車が着く。着く前にエコー、採血、点滴の準備を」 「は、はいっ」 医大生になった由宇は、かつての紫藤のように少年棟に実習に来ていた。 その初日の朝、あいさつもそこそこにまさかの急患らしい… 数分後、由宇はその患者と付き添い人に叫ぶほど驚いた 「いやです…っ!実継さん」 「こら、宵。暴れるな!降りるぞ」 「祖父江!手がいるかい?」 「大丈夫。余計暴れるだろうから待っててくれ」 「分かった」 「そ…祖父江先生!?」 は?え…ちょ、待って…なんで祖父江先生が? しかも、腕に抱えてんの師長さん…? 名前で呼び合ってるし…どういうこと? 「佐久間先生、エコーの用意できてるかい?」 「え?あ、はい」 「いろいろ疑問はあるだろうが後で話すから。まずは真尾くんの診察をするよ」 ほどなくして、諦めた真尾が疲れた表情の祖父江に抱かれて救急車から降りてきた 「いろいろ迷惑をかけた。ありがとう」 隊員に礼を言い、診察台へと真尾を横向きに寝かせると落ちないように側に祖父江は控えた 「瀬谷、悪いな?由宇の初日の朝にバタバタと…」 「いや、それも経験だ。診よう」 「瀬谷…先生…っぅ…い゛…っぁあ」 声を震わせながら真尾が瀬谷を呼んだとき、再び痛みが真尾を襲った。 「実継さん実継さんっ」 痛みに体を動かし真尾は祖父江に抱きついた 「あ、ちょ…宵!エコーとるのに何をやって」 「痛いっ痛いの!」 「分かったから、宵。横になれ。瀬谷が診れない」 「どうせあるのは分かってるからやらないっ」 「ん〜…困ったね、実継?真尾師長は家ではいつもこうなのかい?こんなに痛みに弱いようじゃベッドで苦労するね?」 「いや…それはそれだ。尿路結石は前も錯乱状態だったから仕方ない。尿道を触られるのをひどく嫌うからこの後を想像して怯えているんだと思う」 「いつも穏やかな子だから、こんな姿を見ると辛いね」 「大変だろうが、治療してやってくれ。朱雀」 「頼まれずとも治療はするが…今以上に泣かせることになるね。押さえを佐久間先生がうまくできるか分からないし…実継も大丈夫かい?辛くなるようならヘルプを呼ぶが?」 「いや、本当に辛いのは宵だから俺は大丈夫だ。それより早くなんとかしてやりたい」 「分かった」 「宵、ごめんな?」 祖父江はすがる真尾を払いのけ、真尾をベッドに腹這いに寝かせると、真尾の膝裏に乗った

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