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宵さん、甘え泣き
「実継さん、お願い…帰りたい…っぅぅ」
「宵…悪いが帰らせれない。今日は病院にお泊まりな?」
「やだっ…っぅ…ぇ…っく…」
「宵……頼むから困らせるな」
祖父江は真尾を体から離し、やや怒った口調で真尾に言いきかせようとしたが、真尾は納得できなかった
「お医者さんが家にいるのになんで帰れないんですか…!」
「今日はいいが…明日から仕事で家に1人になる。お互い不安だろうが」
「…そうだけど……」
「独りじゃ寝れないか?」
「それも…あるけど……。またあの子たちに迷惑がかかります。恥ずかしいし…」
「なるほど…」
「ん?どうした?宵くんは寂しがりなのかい?くまちゃんのぬいぐるみあげようか?」
「ぬいぐるみ…」
「そう、ぬいぐるみ。クレーンゲームで獲れたてのやつ。あげるからしばらく泊まっていきなさい」
「でも…」
「遠慮しなくていい。それに看護師くんたちもそれが仕事だから迷惑とは思わないはずだ。もしそんなのがいたら指導するから言うといい。恥ずかしいのは少し我慢がいるがね。じゃあ、医局にあるから取ってきてあげるよ、病室に届けるから」
瀬谷はひらひらと手を振り
「由宇、先に戻るから後で医局に来てくれるかい?」
「え?あ、はいっ。片付けは?」
「アシスタントさんがやってくれるから問題ない。祖父江と宵くんを部屋に送って医局に帰ったらレポートを書きなさい。実習時間内にある程度やらないと家で大変だからね」
「う、うん。あの、師長さん見学ありがとうございました。お大事に」
「由宇くん…みっともないところを見せてごめんね」
「大丈夫。痛いのは辛いもん。よく頑張ったね」
瀬谷が内視鏡室から出ていくと真尾は祖父江に両手を伸ばし
「病室、送ってください。面会…来てくださいね?」
「ああ。絶対毎日会いに行くから。くまちゃん抱いて待ってるといい」
「くまさん…あの、もらって本当にいいんですかね?」
「朱雀のクレーンゲームはもうあれ、一種の中毒だからもらってやれ。結婚したって言うのに獲り続けてあげく獲るだけ獲って満足して家に置けないからって医局に景品ほったらかしだから…よっと」
祖父江は真尾を横に抱き、体が宙に浮くと真尾は祖父江の首に手を回した
「由宇、点滴スタンド頼むな」
「分かった。なんていうか…その、2人って…仲良しなんだ?瀬谷先生も噂じゃ聞いていたけど結婚したんだ?」
「びっくりしたか?」
「うん。びっくりしたけど、俺、気にしない…っつーか…俺もそういう相手いるし」
「「えぇっ」」
祖父江と真尾は驚き、目を見開いた
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