548 / 1216

大人びた紫苑くん

手を引かれてやってきたのは処置4という部屋… 「ここ?」 「そ」 「処置室は1〜4まであってそれぞれ役割が違う。今日は4だけど、明日は2で医者も違うから。もし不安なら付いていくけど明日どうする?」 「道覚えたし1人で大丈夫と思うな」 「遠慮しなくていいけど本当に大丈夫な?明日のお医者さん紫藤って言うんだけど、時間にこうるさい人だから10時になる5分前にはここに来てほしい」 「分かった」 「紫苑くん、15歳だよね?なんか精神年齢高そう」 「そう…かな?」 紫苑は照れて笑った 「あ、可愛い。紫苑くん笑うと可愛い」 「本当だ。エクボできるのな?」 「お母さんに似たのかな?」 処置4の扉を開け中に入り 「ちなみに紫苑さ、クレーンゲーム好き?」 「え?好きだけどお父さんほどじゃないよ?あ、でも…今この間お父さんと獲ったやつがある」 紫苑はポケットに手を入れ小銭入れを取り出し、佐久間に見せ 「これ」 「遺伝ってやつ?すごいじゃん」 「へへ」 ウィーン…カチャンー 「へ?嘘…鍵かかるの?」 「びっくりするよね?このシステム。嫌がって逃げる子がいるかららしいよ」 「みぃ先生…僕、2回目くらいまでは我慢できるけど…痛くしないでね?」 「え?失敗すること前提?」 「なんていうか…瀬谷先生の子だな。なんとなく面影感じる」 「本当?嬉しい」 ニコニコと紫苑は笑いながら椅子に座り 「紫苑くん椅子で大丈夫?寝ながらでもいいよ」 「なんで?」 「たまにひっくり返っちゃう子がいるんだよ」 「へぇ。でも、大丈夫と思う」 「じゃあやってくね?腕、両方見ていいかな?」 「うん、はい」 素直に紫苑は両手を差し出し 「先生、左の腕のがいいかな?」 「そうだな。こっちのが採りやすそう」 紫苑!俺と違ってめっちゃ素直っ 今まで何人も診てきたけど…いい子 この感じなら…大丈夫そうかな? 佐久間が感動している中で、未羽は紫苑の腕を縛り血管を確かめた。 「紫苑くん、いくね?消毒するよ」 「うん」 「チクってするよ」 「……っん……んーーっ」 なかなか出てこない血にちょっと不安を覚えた紫苑はじわじわと涙を浮かべ、そんな紫苑に佐久間はそーっと紫苑の背中を抱きしめ 「紫苑…?大丈夫?」 「ん。うん…」 「紫苑くん、ごめんね」 「みぃ、針を引いてみ」 「はい」 「…っい…っ」 「で、浅めに戻す」 「…はい…浅めに」 「…んぅっ…」 「ダメだな…刺し直して」 「佐久間先生、変わって?泣き出してるしもう僕は刺せないよ」 「だめーっ。逃げちゃいけないんだよ?僕、まだ我慢できるから」 「…なんていい子なの…?紫苑くん。偉いよ。まだ15歳なのに」 「そんな褒めなくても…僕、もう高1だよ」 「注射ダメな子多いから、ここじゃ褒められるよ紫苑くん」 「みぃ、紫苑に甘えてもう1回やらせてもらいな?次はいける」 「うん。紫苑くん、ごめんね。もう1回いくね」 未羽は息をふぅと大きく吐き、刺し直しの体勢に入った

ともだちにシェアしよう!