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縁先生と紫苑くん

翌日の9時45分紫苑は、昨日佐久間に言われた通りに処置2の前に来ていた。 コンコンコンー ……ー 「?」 反応の無い扉の向こうを不思議がり紫苑は首を傾げ 「あ、あれ?2…であってるよね?」 どうしよう…と戸惑っていると肩をトンと叩かれた 「っひゃ」 「あなたが紫苑…ですか?早いですね」 紫苑は肩をすくめながら振り返り 「はい。えと…紫藤縁先生ですか?」 「え?なんでフルネームを…」 「聞きました。縁先生って呼んじゃダメ?」 「……」 始めて見るタイプです… こんなに早く来る子はいなかったし、名前で呼んでもいいかと尋ねるなんて… どうしたら? 「先生?」 「中に入りましょうか?」 「う、うん」 中に入ると昨夜のあたたかみのある部屋と違って無機質な部屋 無情に響く電気錠の音… 紫苑は思わず後ずさった 「…ぅ」 なんか…帰りたいかも……怖い 「どうしました?」 「えと…帰ったらダメ?」 「……ダメ…ですね。何をしにきたんですか?あなたは」 「治療…」 「その通りです。ここに入ったらそこのベッドに横になって寝てください。今日は右に来週は左に……」 「な、何するの?」 紫苑は恐る恐る履き物を脱ぎ、ベッドにまずは座りあたりを見回した 「男性ホルモン補充療法といいます」 「?」 「佐久間からは何も聞いていないですか?」 「うん」 「端的に言うと男性ホルモンの注射を打ちます」 「注…射?」 「そうです。今日は初回ですからモニターを付けさせてもらいます。息苦しいとか気分が悪くなるようなら早めに言いなさい。いいですね?」 「う…うん」 この先生…嫌いかも……怖いよ、お父さん 紫苑がベッドに横になると、紫藤は紫苑の病衣をはだけさせ、血圧計と電極パッドを取り付けていき、無表情のままモニター画面を調整する紫藤の横顔を見つめ怯えながら右腕を出した 調整が終わり、紫苑に目を移すと紫藤はその腕をしまい 「?」 「腕ではありません。触りますよ」 紫藤は壁を向くような形で紫苑の体を左向きに寝かせ 「膝を楽に曲げましょうか?」 「え?」 紫藤は紫苑の右側のおしりを触り 「ここに打ちます」 「う…嘘〜……やだ…そんなとこ打たないでっう…ぇ…あーん」 紫苑の怯える声と泣き声が処置2に響いた

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