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涙の治療
「…ぅ……ぅ〜…」
腕に刺す注射とか少しのことなら我慢できるけど…これ、無理ぃ
佐久間はベッドに座り紫苑の体が動かないように支える程度に掴んでいたが、紫苑の表情を見て掴む手に力を入れた。
あー…俺が来た時からシクシク泣いてたけど、、これ大泣きするやつだ
痛いよなぁ…もしかしなくても
「…んゃ…先生!痛いっ…痛いよ」
「あと少しです」
「…ふ…ぅえ…っい…ぁあーんっ」
やっぱり本格的に泣いちゃった。
泣くよなぁそりゃ。でも、暴れないじゃん
偉い!
「よしよし、紫苑?もうちょいだって」
「んぅ…っひく…ぅう。由宇先生ぇ」
頭を撫でる優しい佐久間の手つきに紫苑は安心感を覚え甘えた声で佐久間を呼んだ
「はい、おしまいです。よく頑張りました」
紫藤は針を抜き、モニターを外し紫苑の服を丁寧に整えると、後処理を始め
「佐久間?後を頼みますよ?」
「え?俺?」
「受け持ち…ですよね?紫苑もあなたを呼んでいました」
「…ですけど、、先輩は?」
「もうすぐ委員会があるのでそちらの準備に」
「委員会って…11時30分からの院内感染対策委員会?まだ小一時間あるじゃん」
「また後ほど…」
逃げるように紫藤は処置2から姿を消した
「…俺もケアって苦手だけど、、打ち逃げ?」
「…っ…ぅ…っぅ」
「よしよし、頑張った頑張った。暴れずに偉かったよ、紫苑。紫藤先生さぁ、忙しいみたい。ごめんなぁ」
「…ぐす…お父さん…」
「んー?」
「お父さん…呼んで?由宇先生」
「…え?お父さん仕事中だよ?」
「お願い…お父さん…っ」
「分かった…」
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