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お父さん、帰りたいよ

佐久間は駄目元で泌尿器科に電話をかけた 「瀬谷先生?いま忙しい?」 ″いや…どうした?″ 「紫苑が…泣きながらお父さん呼んでって」 ″そうかぁ早速か…すまなかったねあの子は寂しがりで″ 「少年棟に来れます?」 ″分かった。ちょっと待っていてくれるかい?″ 「処置2にいるんでお願いします」 しばらくして処置2に瀬谷が現れ、瀬谷の姿を見るなり紫苑はさらに表情を崩した 「ふぇ…ん…お父さん…っ」 「どうしたのかな?紫苑は」 「…っぇ…ぇ…」 紫苑はベッドに座り泣きながら両手を伸ばし、瀬谷はその手を取り抱きしめた 「よしよし。そんなにぐずぐずに泣いてるのは久しぶりだな?」 「っぅ…ぐす…っ」 紫苑は瀬谷の服を握りしめ、止まらぬ涙を瀬谷の服に顔を埋め拭った 「紫苑の甘えん坊…」 「…たい……」 「んー?」 「帰りたいよ」 「紫苑…どうしたのか言えるかい?そんなに注射が痛かった?」 「それも…あるけど……縁…紫藤先生が…っ」 「あー…まあ彼は気難しくてとっつきにくいタイプだからね?紫苑は悪くないよ」 「お父さんはあの先生をそのままにしておくの?」 「え?」 「僕ね、思うの。患者さんも紫藤先生もこのままじゃよくない気がする。違うかなぁ?お父さん」 「…確かに紫苑の言うとおりだね。しかしこれとそれとは話が別で紫苑?いまおまえには紫藤先生の治療が必要なんだ。だから頑張ろう?」 「嫌だよ…帰る。お父さんと帰るんだもん」 「紫苑」 やや声をあげて瀬谷は紫苑の名前を呼び、紫苑から体を離して紫苑の肩を掴みじっと紫苑を見た 「よく聞きなさい。治療が終わるまでは家には帰れない。いいね?」 「いや!射精も勃起もしなくてもいいもんっ僕困ってないから」 「説明したのを忘れたかい?紫苑」 「そうじゃ…ない……けど、僕…こんなの耐えられないよ…っ紫藤先生を助けて」 「助けるって…んー…どうしたらいいと思う?由宇」 「ええっ?俺に振る?」 瀬谷と由宇は顔を見合わせて頭を悩ました

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