607 / 1217
紫藤 佐渡のその後
「ま…待って!待てってば」
6号室から1人フラフラと出ていった紫藤を佐渡は追いかけていた。
フラついてるくせに…足、早っ
追いつけん!どうする
佐渡が悩んでいると、ピタっと紫藤がステーション前で立ち止まりあたりを見回し誰かを探している様子だった
え?止まったのか?よし…
これなら
ガシっー
佐渡は紫藤の左肘を掴んだ
「…っぃ」
「捕まえた。フラフラなのに1人で出ていきやがって危ないだろうが!」
やや強めの口調で紫藤を叱ると、紫藤は首を傾げ
「何が?」
「何が…って転倒とか」
「あなたがいるから大丈夫です」
「あんだけ先に行かれたらいくらの俺でも助けれん無理だ。頼むからえっち以外でケガをしないでくれ」
「…聞こえたらどうするおつもりで?」
「もう隠さない。決めたから」
「……公に?」
「何か問題あるか?決めたと言ったら決めた。従え」
「…はい…」
紫藤は抑揚の無い声で返事をしステーションに入っていった。
慌てて佐渡が後に付いていくと、佐渡と紫藤の姿に気づいた周防が近寄り
「先生ら、どないしたんです?お揃いで」
「師長、私と局長は所用でしばらく出勤しません」
「は?そしたら、ゆきとみぃ先生の注射どうなりますか?」
「涼木に委ねます」
「涼木?涼木ってあの涼木?何、言うて…いくら注射うまいって言うても看護師やで?」
「呼んでください。指示を出します。指示の元なら許されます」
「わ…分かりました。いま、おとくんと中庭で遊んどるんやけど電話しますわ」
「お願いします」
えらいことになった…
そりゃ、他科…特に精神科なんかは普通に筋注しとるけど…うちでそれって
しかもあの紫藤先生が役目委ねるって相当やで
周防はドキドキする気持ちを抑えながら涼木に電話をした
ともだちにシェアしよう!