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涼木 青天の霹靂
〝せやからな涼木くん悪いんやけど、おとくんをお部屋に誘導したらでええからステーションに帰ってきてほしいねん〝
「なっ…分かり…ました」
電話を切ったはいいがその電話の内容に涼木は複雑な表情を浮かべ、ボールで遊ぶおとを眺めていた。
はぁ…先輩からの電話って本当ロクなことない…
紫藤先生は紫藤先生で…俺を呼び出してどうしたいんだ
アフターケアばっかり押し付けて…こっちは便利屋じゃないっつの
「はぁ」
待たせてなんか言われるのも面倒だしおとを呼ぶか
「おとーっ!そろそろ帰ろ?」
「はーい」
おとは素直に返事をし、涼木の元に走り寄ってきた
「あ、こらこら走らなくて大丈夫」
「ごめんね?たいがくん。大好き」
ボールを左手に持ったニコニコ笑顔のおとが抱きついてくると涼木も抱き返し笑った
「ありがとうな?」
あーやっぱ兄弟だなぁ
うたの入院中見てるみたい
うたの奥さん、俺の妹なんだぞって言ったらびっくりするよなぁ
隠す必要ないけど今更感があって言えない
さ、行こう
涼木とおとは手を繋いで病棟へとあがり、デイルームでうがいをすると楽しく会話をしながらおとの病室へと向かった
誘導後、ステーションに向かうと見える紫藤と周防の姿。後、なんでだか佐渡先生
うわ…なんかやな感じ
さっきまでの楽しい気分が…一気に憂鬱に
「あー、すみません。遅くなりました」
「涼木くん、こっちこっちー」
周防に呼ばれて気まずそうに涼木が3人の輪に近づくと紫藤が口を開いた
「涼木…私は静養が必要だそうでしばらく出勤しません。ちなみに佐渡局長も休みます。なのであなたに処置2の管理を任せます」
ポケットから鍵を出すと、紫藤は涼木に頭を下げた
「管理って…何この鍵?」
「準備室の鍵です。中にホルモン注射に使う道具が収納されています」
「は?」
「えーとな?紫藤と俺もだけどしばらく休むことになった。だから紫藤のしていた注射を変わりにしてほしい」
「なーっなんで俺?」
「あなたが少年棟内でいちばん注射の腕が立つ。子どもたちにも懐かれてるいるし適任です。では、指示もしましたし鍵も預けましたからね?頼みました。琢磨さん、行きますよ」
「あ、ちょ…縁っ」
佐渡は慌てて紫藤の手を繋ぎ、2人はステーションから消えた
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