596 / 1217
紫藤 休暇命令
電話の後、10分ほどで駆けつけた瀬谷は状況を見て頷き
「佐渡くん」
「先生、すみません。ウロ の方は大丈夫ですか?」
視線を瀬谷に向けて佐渡が尋ねると瀬谷は頷いた
「うん。副長に託してきたから数日は大丈夫だからね」
「恩にきます」
「紫藤くんは連絡くれた時からずっとこんな感じかい?」
「ですね…急に崩れ落ちて俺に抱きついてこんな感じです」
「そうか…やはり休暇が必要だね。後のことは任せてくれればいい」
瀬谷の言葉に佐渡は頭を下げ、抱きついたままの紫藤の両肩を持ちいったん離れさせ
「縁?聞いてたな?しばらく休もう?」
「嫌です…っ…まだ、未羽の経過を診れていない。今は持ち直しているけど一時的な回復で3時間後に再度低血糖におちいる可能性があります…っ。放ってなどいけるわけが」
「大丈夫っ」
寝たフリを続けていた未羽が堪らず体を起こして口を挟んだ
「ぼくなら大丈夫だから紫藤先生。よく分からないけど休んでください。そして元気になったら戻ってぼくの病気、治して?それまで待ってます」
「そうだよ、紫藤くん。その間は俺が責任持って少年棟を支えるから安心しなさい。君はもっと甘えていいんだよ。元上司命令とでも思えばいい」
「…」
言い返せなくなった紫藤はしばらくして頷き、
頷く紫藤を見て佐渡は
「立てるか?帰ろう?」
優しく声をかけた。
「…」
紫藤は黙って立ち上がり、そっと右手を伸ばし未羽の左頬に触れ
「未羽…大きくなりましたね?今度は私が助けられました。感謝します」
紫藤はフラフラと歩き出し、瀬谷に深くお辞儀をし6号室から出ていった
ともだちにシェアしよう!