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紫藤 休暇命令

電話の後、10分ほどで駆けつけた瀬谷は状況を見て頷き 「佐渡くん」 「先生、すみません。ウロ(泌尿器科)の方は大丈夫ですか?」 視線を瀬谷に向けて佐渡が尋ねると瀬谷は頷いた 「うん。副長に託してきたから数日は大丈夫だからね」 「恩にきます」 「紫藤くんは連絡くれた時からずっとこんな感じかい?」 「ですね…急に崩れ落ちて俺に抱きついてこんな感じです」 「そうか…やはり休暇が必要だね。後のことは任せてくれればいい」 瀬谷の言葉に佐渡は頭を下げ、抱きついたままの紫藤の両肩を持ちいったん離れさせ 「縁?聞いてたな?しばらく休もう?」 「嫌です…っ…まだ、未羽の経過を診れていない。今は持ち直しているけど一時的な回復で3時間後に再度低血糖におちいる可能性があります…っ。放ってなどいけるわけが」 「大丈夫っ」 寝たフリを続けていた未羽が堪らず体を起こして口を挟んだ 「ぼくなら大丈夫だから紫藤先生。よく分からないけど休んでください。そして元気になったら戻ってぼくの病気、治して?それまで待ってます」 「そうだよ、紫藤くん。その間は俺が責任持って少年棟を支えるから安心しなさい。君はもっと甘えていいんだよ。元上司命令とでも思えばいい」 「…」 言い返せなくなった紫藤はしばらくして頷き、 頷く紫藤を見て佐渡は 「立てるか?帰ろう?」 優しく声をかけた。 「…」 紫藤は黙って立ち上がり、そっと右手を伸ばし未羽の左頬に触れ 「未羽…大きくなりましたね?今度は私が助けられました。感謝します」 紫藤はフラフラと歩き出し、瀬谷に深くお辞儀をし6号室から出ていった

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