610 / 1217

縁さん 佐渡に甘える

紫藤は佐渡に手をひかれ、病院前に止まる複数のタクシーのうちの先頭のタクシーに乗り込んだ。 「歩けますけど…」 「だめ。道中になんかあったら俺が自分を許せん。運転手さん安全運転でよろしく」 タクシーが動きだすと紫藤は窓の外を眺めながら佐渡にもたれかかった 「どうした?」 「歩けるとは言いましたけど…疲れました」 「珍しいな?疲れたなんて言うの」 「言わないだけです」 「?」 「甘えたい時もあります」 「そっか」 佐渡はもたれかかっている紫藤の頭を撫で 「家まで待ってな」 「ん」 運転手の視線を気に留める余裕も無く紫藤は佐渡に身を預け、家へと向かった ・ ・ 家に着くと2人はすぐに部屋に入り、佐渡はその場で紫藤を抱きしめた。 「縁…頑張ったな」 「琢磨さん…ここ、まだ玄関…靴も脱いでませんよ?」 「早く抱きしめてやりたかったんだ。許せ」 「許すも何も…嬉しいです」 佐渡はいったん紫藤を離して靴を脱ぎ、紫藤も靴を脱いだのを確認すると、紫藤を突然横抱きに抱えた 「っあ…」 「掴まってろ」 「お…降ろしてください…重い」 「大丈夫。縁くらいなら楽勝だ。甘えたいんだよな?素直に甘えてろ」 「…はい」 紫藤は言われた通り佐渡に掴まりリビングへと運ばれソファに座らせられた。 「?」 なんでリビング?という表情で紫藤が見上げると佐渡が意地悪く笑い 「寝室が良かった?」 「ち…違います…ただちょっと…」 「ちょっと?」 「なんでもないです」 「そうやって内に溜めるのはよくない」 「…まだ、お昼には少し早いからちょっと仲良くしたかっただけです」 「…よく言えました」 佐渡は紫藤の隣に座り、そのまま顔を横に向け紫藤の唇に唇を合わせた。 「…ん」 突然の口付けに紫藤は戸惑いつつも受け入れ、佐渡の腰に両手を回した

ともだちにシェアしよう!