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涼木 導尿
「じゃあ導尿をして溜まった尿を出そうか。周防、準備をいいかい?」
「了解やで。14Fr でええです?」
「ん。それでいこう」
「んじゃ、用意します」
準備を待ってる間のわずかな時間が地味に辛い…
普段、病気しないから分からなかったけど弱ってるとこんなにも不安なのか、、
「じゃあ消毒からしていくよ、涼木くん」
「あ、はい。…っ…」
確かに…うん…嫌かもしれない
これか?みんなが嫌がるの
1回だけでも不愉快なのに、これを3回…
慣れない感触と独特な匂いで緊張感が増す。しかも結構奥深くまで消毒してくるんだ。
これは消毒の段階で怖くて泣いちゃうのも頷ける。
「涼木くん、導尿をしていくけど不潔にならないよう動かないようにね。一応大丈夫だとは思うが周防、側に控えていてくれるかい?」
「はい。涼木くん、手ぇ繋ぐ?」
「え…」
そんなこっ恥ずかしいことできるわけがない
何を言ってんだ?この先輩は…
「えと…大丈夫です」
「遠慮せんでもええで?怖いときは怖いって素直に甘えるべきや」
「や…こ、怖くは…」
「強がりやなぁ、自分」
「こらこら、周防?いじめちゃいけないよ。可哀想だ」
「いじめやないです。患者さんらはみんな手ぇ繋ぎよるやん。せやから涼木くんも手ぇ繋いだろ思っただけですもんっ」
「えと…気持ちだけでいいです。先輩。恥ずかしいんで」
「ふーん?まあ気ぃ変わったら言い?」
「分かりました」
「じゃあ挿入していくよ」
「はい……。…っ」
あー…うん、これか
ツンとくる
辛い人は辛いかもしんない。
でも、我慢できない痛みじゃない。
初導尿だけど、痛いより出せなかったものを出せたスッキリ感のが大きいな
それより、チョロチョロ音が恥ずかしい…
「ふー…」
「出たね」
「はい。よかったです」
「後から周防が点滴ルートを取るがどっちの手がいい?」
「左のが動きやすいから左で」
「しかし、冷静だね?」
「え?子どもじゃないんで…」
「大人でも叫ぶ人はいるよ。一晩抗菌薬をしてみて明日朝、また直腸診して腫れがどうなっているか確認しよう。とりあえず今夜はよく休みなさい。痛みで寝れないようなら薬を出しておくから。それと、朝自尿が無いようなら連絡を。いったん医局に帰るが何かあったら遠慮せずに言うんだよ?いいね?」
「分かりました。ありがとうございます」
涼木は瀬谷に頭を下げ、瀬谷の背を見送った
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