659 / 1217
〝あなたのお気に召すままに〝コラボ 2
救急車から降りてきたのは、細身の高校生ー
お腹…それも下の方を抱えて苦しんでいる
「17歳男性佐久間由宇さんです。詳細は不明ですが、つい先々週まで隣町の大学附属病院の小児科に入院されていたようです。
意識レベルやや混濁ぎみではありますが清明。腹痛訴えありでよろしくお願いします」
救急隊から引き継ぎ、ストレッチャーからベットにその子を寝かせ変えると看護師がバイタルをとりデータを叫んだ
「KT 38.5 BP 150/100P 105spo2 96です」
「ありがとう。えと…」
とりあえずよかった。あんまりいいデータではないけどショック状態とかじゃなくて…
「佐久間さん?何か持病とかあります?」
「…え?痛くてそれどころじゃ…っ」
「あ、うん…そうだよね。お腹触るよ?押した時と離した時、どっちが痛い?」
「分かんない…っ」
とりあえずお腹に強いハリがある…
「佐久間さん、最後に大きい方したのいつ?」
「覚えてない…っ」
情報が取れない…どうしたら…
こんな時、成宮先生なら…せっかく大丈夫って言ってもらったんだ。
考えろ…
「とりあえず採血してルートとるよ!看護師さん準備お願いします」
「はい」
葵は、由宇の腕を縛ると血管を探し看護師が用意したトレーからサーフロー針を手に取った
血管は…大丈夫…普段の子どもたちからすれば見える。ここだ
狙いを定めて刺すと由宇は手を引っ込めて嫌がった
「やぁーっ」
「えっ…ちょ」
嘘だろ。油断してた…聞き分けのできる年齢だし、暴れると思わなかった。
「佐久間さん、落ち着いてもう1回頑張りましょう」
「い…いやだ…っ」
たぶん…だけど、この先生…注射うまくない
嫌だ
由宇は体を起こして座りベッドと壁の隅で丸くなり震えていた。
「もしかして…注射、苦手?」
首が縦に動く
「そっか。でも、点滴したら体、楽になるよ?採血して体の状態も診なきゃ」
「分かってる!でも、嫌なものはイヤっ」
これは…お手上げかもしれない…
助けてください…千歳さん。あれから何分も経ってないけど電話に出て
葵は祈る思いで成宮に電話をかけた。
すぐに繋がる電話ー
〝どうした?〝
「先生…ごめんなさい。助けてください。採血ができません」
〝高校生の子だろ?血管細い?〝
「違います。拒否が強くて泣いちゃってるんです」
〝…。分かった、すぐ行く〝
電話の後、千歳さんは本当にすぐ来てくれてその顔を見ると俺は安心感を覚えた
「この子の名前は?」
「佐久間由宇さん」
「分かった。由宇くん。俺は成宮、今から注射変わるね?右でも左でもいいよ。手、出せる?」
「う、うん…でも、痛くしないで」
この先生なら大丈夫かな?
綺麗な先生…優しそう
由宇は左手を出した。
「うん。努力するよ。葵〜、反対の手繋いであげて?」
「分かった」
「じゃあごめんね、チクっとするよ」
「…っ…い…」
「お、偉い。我慢できるね?後少しだよー」
まるで小児科の子に対する対応だ。
小児科に入院していたとはいえ、高校生なのに…
千歳さんはなんでこんな対応を?
「この子の元入院してた病院分かる〜?連絡とってもらっていいかな?」
成宮は看護師に由宇が入院していた病院へ電話をかけさした。
ともだちにシェアしよう!