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〝あなたのお気に召すままに〝コラボ 3
早朝、4時ー
突然電話が鳴った。
登録外番号や。しかし、なんやろ…こないな時間に外線?
周防は時計の時刻を見て驚きながらも電話をとった
「はい。〇〇大附属病院未分化少年特殊治療棟看護師の周防です」
〝早朝から失礼します。こちらは〇〇総合病院小児科医師の成宮と言います〝
なんやねん…芸能人御用達の病院からやないか。それも小児科?
〝佐久間由宇くん、そちらの病院に入院されていたかと思うんですが…先刻、腹痛訴えで当院に救急搬送されまして〝
「え?佐久間由宇って佐久間由宇くん?!なんで…」
〝それでですね、持病など情報の聞き取りができず診察に苦戦しています〝
「なんなんっ!意識無いっちゅうこと?退院してまだ2週なのになんで、こないなことに…」
〝いえ、意識はあります。ただ混乱が強いのか採血で泣き出したり分からない覚えていないばかりでして〝
「あー…せやろな。由宇くん診察嫌いやから」
〝そちらには何で入院を?〝
「事故後後遺症による尿閉です。後、検査の結果、前立腺肥大があって、一応精通も迎えとるようやけどそれにも障害出ていて尿道拡張からいまはステント挿れてるんやけど…また尿閉起こしとるんやろうか…あ、すんません憶測で」
〝いえ、ありがとうございます。よくわかりました。ちなみにそちらの小児科さんではどんな様子でした?やや年齢よりも幼い印象を受けるんですが…〝
「へ?うちは小児科やないで?」
〝はい?〝
「小児と成人の間の中1から20歳くらいまでの子を専門に診てる科で通称少年棟です。性になんらかの障害抱えている子がほとんどなんやけど…由宇くんは泣き虫で意地っぱりかな。たぶん処置、治療は1人やと無理やで?
めっちゃ泣き叫ぶし引っ掻いてくるから」
〝それは…ちょっと配慮がいる子ってことでいいのかな?〝
「ちゃう。発達の子もいてるけど由宇くんはいたって普通の子。けど、痛みにかなり弱い子なだけやで?今夜は由宇くんの主治医で元泌尿器科医の瀬谷がいてるんで、なんならうちに送ってくれてもええんやけど…」
〝いや、そうも言ってられないかな。そちらまでの搬送時間を待っている余裕がなさそうに思う。落ち着くまでこちらで責任を持ってお預かりします〝
「分かりました。瀬谷には話を通しておくのでよろしくお願いします」
電話を切ると周防は椅子に深くもたれ呟いた
「えらいことになっとるやん…わーわー泣いとるんやろうな、由宇くん」
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「だいたいのことはわかった。尿閉だ。導尿の用意をお願いします」
電話を置き、成宮の凛とした声が初療室に響いた
「葵〜?由宇くんの両手、頭上で握ってやって?」
「導尿?それなら俺でも…」
「前立腺肥大らしい。ステント留置もしているらしいし何より痛みに弱くて暴れるそうだから俺がやる。葵、引っ掻かれないようにな?怪我するなよ?」
「う、うん」
急にちょっと優しい言葉が聞けて葵は胸が高鳴った。
頑張れ、由宇くん。おしっこが抜けたら楽になるよ
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