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瀬谷 由宇&臣の家へ

リビングに着き由宇をソファに寝かせると臣は対面式キッチンに向かい、麦茶をグラスに人数分注ぎ 「入院…しなくてもよかったと?」 瀬谷に尋ねた。 「由宇が嫌がってね」 「そうやったとね。麦茶どうぞ」 「ありがとう」 「由宇も飲む?」 「いらない…」 「だめ!お熱出とるとやろっ」 「う…」 「手伝うけん、ひとくちでも飲んで!」 「や…っ」 「飲むっ」 「分かった…」 「なるほど…」 押し問答を続ける2人を瀬谷は優しく見つめ 「臣の方が強そうだね」 「え?」 しぶしぶ麦茶を飲む由宇の頭を支え、臣は首を傾げた 「ん…いや…ひとりごと」 「?」 「もう…いらない……寝る」 そのまま由宇は寝ていき、臣は優しい眼差しで由宇の髪を撫でた 「寝てしまったね?」 「先生?由宇、何のお熱と?前立腺?」 「いや、前立腺は大丈夫だった。患者の1人が昨日、脱走してね。今日発見したからそれはもう大丈夫だがソレの捜索で疲れが溜まったのとおしっこを我慢してしまったんだろうね。排尿障害が起きてる」 「それって大丈夫と?」 「このまま熱が下がってくれれば心配することは無いが…もし38.5以上に上がってくるようならコレを挿れてあげて」 瀬谷はスーツの内ポケットから薬袋を取り出し、臣に手渡した 「コレ?」 臣は中を見て 「坐薬…?」 「そう。嫌がるだろうけど、よく効く。冷蔵庫に入れておいてくれるかい?溶けてしまうからね」 「分かった」 袋が冷蔵庫に入れられたのを見て瀬谷は説明を続け 「挿れる時は由宇を左に向けて、息を吐いた時にね」 「うん」 「呼吸がおかしかったり、何かあればすぐ救急車を呼んで少年棟に搬送してもらいなさい」 「少年棟に?」 「そう。このまま俺はまた病院に戻るから。じゃあ後は頼むよ。いいかい?」 「はい。おつかれさまでした」 「仲睦まじい2人を見れて少し嬉しかったよ。またね」 瀬谷は微笑みを浮かべ、病院へと戻っていった

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