703 / 1208
由宇 救急外来へ
「はい、それではお待ちしています」
ナースステーションで瀬谷は救急隊からかかってきた電話を切り救急外来にかけ直した
「少年棟の瀬谷です。今、うちの元患者が搬送されてくるのでこちらで対応します」
〝元患者さん…ですか?〝
「ええ、ちょっと対応難しい子…というかうちの現職員なので…」
「分かりました」
「西、ちょっといいかい?」
「はい?ってなんでステーションにいるんですか?どうしました?」
「由宇が搬送されてくる」
「え?由宇って佐久間先生?」
「そう。たぶん一筋縄じゃいかないだろうから一緒に救急外来へ来てほしい。巡回は終わったんだろ?」
「はい、みんないい子にしてますけど…えーと佐久間先生、さすがに退院してン年だし、入院中みたいに泣き暴れるってことは…」
「あるんだな…これが」
「え…マジか」
「そう。だからオンコール日だけどそのまま院にいたわけだ。で、さっきちょうどステーションに来たら電話があってね。今40度あるそうだ」
「40!?」
「とりあえず行こう。着き次第、採血、点滴、膀胱留置をしよう」
「了解です」
しばらくすると救急の駐車場に救急車が到着し瀬谷と西は走り寄った
車の扉が開くと臣に抱きつき、はあはあと息を荒げている由宇が見え
「由宇、降りてこれるかい?」
由宇は臣の胸に顔を埋めて首を左右に振り
「抱っこしてあげるけん、降りよ?」
「いいよ、臣。降りる時は危ないから俺が…」
瀬谷は車内に乗り由宇の前に両手を差し出し
「おかえり、由宇。おいで」
「由宇、先生に甘えてよかよ?」
「ん…」
臣から顔を離し、由宇は瀬谷に両手を伸ばした
「よし、降りるよ。臣は夜間受付で入院手続きをしてあげて」
「はい」
しっかりと由宇を抱きあげて救急車から降りると瀬谷は少年棟へと歩を進めた
「先生、ストレッチャーには?」
「搬送時乗ってくれなかったから、臣に抱かれていたんじゃないかい?そう考えると厳しいだろうね。なら、はじめから抱っこで少年棟へ行く方が早い。先導を頼むよ、西」
「はい。処置3?」
「いや。1に行く」
「分かりました」
少し急ぎ瀬谷は歩き、処置1へと向かった
ともだちにシェアしよう!