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むー、頑張る

「ひっく…ぅ…やぁら…ぅっく、注射もうしたない…頑張る…から、注射せんといて…ぇ」 「しかし…今みたいに暴れると危険だ。分かるかい?雅宗」 「分かる…暴れへんから…っひく…堪忍して」 「よしよし」 瀬谷はティッシュで周防の涙を拭いとり 「もう一度やってみてダメなようなら注射させてもらうよ?いいね」 「っぅ…ぐす…分かった。お願い…します」 「いい子だ。じゃあ再開するよ?」 「うん…」 体をこわばらせビクつきながらも周防は大人しく3回の消毒を受け 「よーし。ここまで頑張れたね。いよいよ本題だよ?管が入るけど暴れないように。尿道に傷が入るとおしっこのたびにしばらく泣かないといけなくなるからね」 「ぇえ…そんなん…」 再びじわっと涙を浮かべる周防を見て牟呂は周防の手首から手のひらに握り変えてぎゅっと握り 「むー、大丈夫。暴れなければそんなことならないから。怖くないよ」 「しー…先輩」 その様子を見て涼木も手の位置を変えて、周防の手のひらを硬く握り 「周防先輩、怖い時は手を握って甘えるって言ってましたよね?」 「涼木くん…」 周防は2人の手をぎゅうっと握り返し 「頑張る…けど、たぶん泣いてまう…俺」 「泣いていいんだよ、むー。泣くことは悪いことじゃない」 「しー先輩…あんなぁ、お願いやねんけど…クレープ()うてくれる?」 「いいよ。イチゴもバナナも入ってるやつ買ってあげる」 「涼木くんはアイス屋さんのアイス」 「え?俺もご褒美あげる流れ?」 「あかんの?」 「わ、分かりました。頑張ってくれるなら特別に2段の買ってあげます」 「はは。じゃあ…雅宗?俺からはぬいぐるみをあげるよ。くまさんとうさぎさん、どっちが良い?」 「どっちも欲しい」 「分かった分かった。今度あげよう。それじゃ頑張るよ、雅宗」 「うん」 周防はドキドキしながら管が入る瞬間を待った

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