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琢磨さん ようやく帰宅
紫藤に電話を切られた後、佐渡は大急ぎで走って家へと帰った。
GPSは自宅を指し示しているから家出はしていない…そう思いたいが、単に電話を持たずに家を出ていった可能性も、、
汗ばむ手をズボンで拭い、鍵を開けると紫藤の靴がきちんと玄関に並んでいて、リビングに電気もついていた。
よかった。どこにも行っていない様子だ
「縁…?」
部屋に入ると、紫藤はソファにネコみたいに丸まっていた
佐渡の気配に気が付くと紫藤は飛び起きて走りより抱きつき、ちゅと唇を合わせ
「おかえり」
「縁…怒って、ないのか?」
「ただいまは?」
「え…あ、うん。ただいま。待たせたな」
「待ってました。あなたの帰りをずっと。だから、いい子って言ってください」
「いい子だ」
「もっと…」
「偉かったな?縁…いい子で待てて。寂しかっただろ?」
「はい。とても…」
「泣いた跡が…縁。連絡できなくて悪かった。申し訳ないことをした」
「もういいです。あなたがちゃんと帰ってきてくれたから。帰らないんじゃないかと思って怖かった…」
「約束を破ってすまなかった」
「お風呂…入りましょう?」
「風呂?」
「水に流します。ところで、周防は無事ですか?」
「あ…いや、治療にたどりつくまでに難航してな。泣いて泣いて今時分ようやく治療に入ったとこだろう…だから、無事かは分からない」
「心配…ですね」
「ああ。でも、後は瀬谷先生が何とかしてくれる…」
佐渡は紫藤の額に自身の額をくっつけ
「周防のことは任せて、俺たちの時間を大事にしようか?縁」
「はい」
紫藤ははにかみながら笑い、きつく佐渡を抱きしめ直した
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