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宵さん だだっ子
祖父江と真尾は診察室の隣の処置室に移動し、看護師が用意した点滴を祖父江は受け取り
「用意ありがとう。留置は俺がやる」
「分かりました。お願いします」
「さぁ、宵。左腕を出して」
「やだ。やるなんて言ってません」
「痛くしないから」
「いーや」
「よーい!」
「しつこい」
「どうしたら留置させてくれるんだ?」
「家に帰る」
「だめ」
「帰ると言ったら帰るんです!入院なんてごめんですからっ」
「困ったな…言い出したら聞きやしない。宵、悪いが無理矢理やるぞ」
祖父江が真尾の左手を掴むと、真尾は暴れ
「いゃーーっ離してくださいーっ帰るーーっ」
外来中に響く声で真尾が叫ぶと、少し離れた位置にいた診察中の紫藤が慌てて駆けつけた。
「何事ですか?!」
「紫藤…」
「え…師長…これは…いったい」
「急遽だが入院が決まった」
「だから!入院しないですっ」
「宵!とにかく、黙って留置させろ」
「なるほど…点滴させてくれないわけですか。押さえてもらえます?きつめに」
「助かる」
「いやぁー」
「何をそんなに嫌がってるんです?師長」
「入院したくないの!!」
「だだっ子ですか?あなたは。危険な頭痛と判断されたわけでしょう?検査入院すべきです」
紫藤のきつい言い方に真尾はじわっと涙を浮かべ、首を横に振った。
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