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困ったさん

真尾の泣き顔を見て紫藤は驚いた表情を浮かべ「え…泣く!?泣くんですか…?師長。そこまで嫌がらなくても…」 「先生だっておうちの方がいいですよね?…ぐす」 「え…ええ…まぁ。気持ちは分からないじゃないですが…」 「じゃあ、おうち帰らせて?」 「…う。はい、そうですかとは言えません。落ち着かないならおしりに注射しましょうか?痛いですけど落ち着きますよ?看護師さーん、ちょっといいです?」 「う…っぇ…先生は味方と思ったのに…あんまりです〜っ」 「弱りましたね?こんなにぐずぐずになるとは…困ったさんにも程があります」 「頑固だからな…嫌と言いだしたら聞かない」 「…ですか」 祖父江と紫藤が顔を見合わせていると、奈南が車椅子を押して処置室に現れ 「お待たせしましたー」 「お、いいところに」 「え?あ…」 あきらかに不機嫌な真尾の様子に奈南は苦笑し 「ぼく、夜勤明けなんだけどなぁ…せーんぱい?」 奈南が両手を広げると、真尾はすぐさま奈南に抱きつき 「詩乃〜…」 甘えてくる真尾を奈南はしっかり抱きとめ 「動かないでくださいね?先輩。落としちゃうから」 そのまま体勢を変えて真尾を横に抱きあげた 「え…ぁ、いやっ」 「ベッドにうつ伏せるから手伝ってください。先生」 「了解だ」 「よっと…っっ。乗りますよ!」 奈南はうつ伏せにした真尾の足の上にヒョイと乗り、真尾の動きを封じた。

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