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蟻地獄
奈南が手ぐすねひいて待っているとやや疲れた表情の涼木が家へと帰ってきた。
まさか奈南がいるとは思っていない油断している涼木はいたって普通に居間に入り
「ただいま〜」
帰宅の挨拶をすると、返事をくれた人物に目が飛び出るほど驚いた。
「おかえり、大雅」
「のぁっ!な、な、なんでっいるの詩乃さんっ待ち伏せとかひどい」
「大雅っ!先輩に向かって何を言うの!」
「大丈夫ですよ、おばさま。突然でびっくりしたんでしょうね?ね?大雅」
「あ、う…うん」
涼木は奈南から視線をそらし
「詩乃さん、通しで働いたんだから疲れてるんじゃないの?」
「疲れてるよ。だから早くやることやって一緒に仮眠とろうか?」
「え、やだ!詩乃くんたら夜勤明けで来たの?」
「実はそうなんです。気になっちゃうと寝れないんでお邪魔してしまいました」
「し、詩乃さん…その…上……行きましょうか?」
「おばさま、大雅を少し借りますね?」
「どうぞどうぞ。好きにしてやって」
「えっ母さん!」
「大雅!先輩は大事にしなきゃダメよ?詩乃くん、母さんのお気に入りなんだから来てくれなくなったら母さん寂しい」
「おばさま?心配しなくてもまた来ます。明日も」
「えーっっ」
奈南の発言に涼木は叫ぶよりほかなかった
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